錚吾労働法

七八回 配置転換②
 「一寸の虫にも五分の魂」の立場から言うと、ガチガチの指揮命令権に彩られた労働関係なんざ、「真っ平御免なすって」てなことになるんだよ。優秀なのが命令聞かないから首にされるなんてやりかたは、結構あると思うけど、企業にとって損失なのさ。指揮命令する立場の人間は、誤りのない人事評価が出来、労働生産性を向上させる手腕を発揮することが出来、労働者の状況に配慮することが出来るのでなきゃいかんな。
一口に配置転換といっても、「事業所内配転」、「事業所間近距離配転」、「事業所間遠距離配転」、「国際配転]、「同種配転」、「異種配転」という具合に、いろいろある。一般的に、配置転換の距離が遠方になればなるだけ、また、職種を異にする程度が高ければ高いほど、使用者がしなければならない配慮の程度が高いものとなるであろう。また、配置転換は、労働者本人のみならず、その「家族」についても使用者として考慮せねばならないことがあるだろう。さらに、「独身者」よりかは、「既婚者」に対しては配慮すべきことがあろう。さらに、「職業資格」を要する労働から、資格を要しない労働への配置転換や「安全業務」から「危険業務」への配置転換の場合には、単なる異種配転とは異なる配慮も、必要となるであろう。
 企業活動は、常時順調であるわけではない。「リストラ配転」も当然のことながら、あるであろう。会社内の特定部門または事業所を「閉鎖」しなければならない場合もあろう。それでも、「解雇」はされないにこしたことはない。労働場所や職種を限定した労働契約が締結されている場合もあろう。それも、仔細にみれば、「場所の限定」、「職種の限定」、「場所と職種の限定」の各場合があるに相違ない。場合によっては、「非配転」が約定されている労働契約もあるにちがいない。
 配置転換が使用者の「労動力配置権」または「配転命令権」の「乱用」とされたり、配置転換が「信義則違反」とされたり、あるいは法令に違反して「違法」とされるのは、どのような場合なのかについては、上に述べた様々なことを念頭に置きつつ考察されなければならないであろう。