壮吾労働法

二一〇回 有期労働契約と無期労働契約⑤ 日々労働契約は、一日限りの労働契約をいう。一日数時間の労働契約もある。このタイプの労働契約は、一日のうちに当然に効力を失うので、原則として解約はありえない。しかし、一日限りの労働契約が日々連続的に締結さ…

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二〇九回 無期労働契約と有期労働契約④ 優れた労働者は、我が労働力をもっと高く買ってくれる企業はないのかと、考えるているだろう。「企業共同体(カンパニー・コミュニティー)」論は、今や破産した考え方になってしまった。もっと高く自分を買ってくれる…

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二〇八回 無期労働契約と有期労働契約③ 労働者が、その労働者生活をたった一つの会社、一つの役所で開始し、終了する。無期労働契約の着想は、このような着想に胚胎するものである。しかし、よく考えて見ると、労働生活をたった一つの会社、一つの役所で完結…

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二〇七回 無期労働契約と有期労働契約② 労働契約の期間の定めは、労働者がその使用者に対して負うこととなる労働する義務の継続する期間であるので、重要な労働条件といわねばならない。労働契約の期間の長短は、労働する労働者が正規か非正規かには関係がな…

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二〇六回 無期労働契約と有期労働契約① 有期労働契約は非正規労働契約ともいわれ、無期労働契約は正規労働契約ともいわれている。有期労働契約は、今後の労働紛争の増加要因の最大のものだという認識をもって臨むべき労働契約である。有期労働契約であると無…

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二〇五回 労働契約②キャリア 労働契約の締結は、キャリアの観点から言えば、原則としてキャリア積み上げのスタート、開始であると言ってよい。しかし、労働者のキャリアは、基本的には使用者の指揮命令に従いつつ、使用者のために積み上げられるものであり、…

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二〇四回 労働契約①キャリア 働く意思と能力とがあれば、人は、年齢に関わりなく働くことが出来る。高齢だから働いてはいけないなどとは言えない。しかし、他人の指揮下に働く労働者の場合には、そうなっていない。。最近に問題となっているのは、65歳までの…

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二〇三回 労働契約と期間⑤ 抗がん剤は、生体を弱めることがある。「みなし」規定の導入には、この危険があることを縷々述べてきた。しかし、そのこととは別に、法の規律は、正確に知っておかれるべきである。以下、簡単に述べておくこととする。 1 「有期契…

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二〇二回 労働契約と期間④ 「みなし」規定を入れてしまった以上、労働者も使用者も、「みなし」が効果を発揮するよう、あるいは発揮しないよう工夫を講ずることとなるだろう。労働者保護を徹底したつもりがそうならないというのが、一番こまるのである。あま…

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二〇一回 労働契約と期間③ 有期労働契約の期間の上限が五年だということになると、勘ぐり癖のある者ならば、アメリカは対日改革要求の一環として何か言ってきていたのかなと思うに違いない。アメリカ人にとって、日本は働きやすい所ではない。期間限定的で、…

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二〇〇回 労働契約と期間② 学生時代の話で恐縮であるが、「有期労働契約を更新し続けていると、期間の定めのない労働契約になってしまう」という理屈を理解できなかった。それは如何なる論拠があってのことなのか。学生時代に考えていた理屈は、「ただ漫然と…

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一九九回 審問抜きの命令 労働委員会が発足した初期に、岐阜県労働委員会は、調査後に審問を経ないで不当労働行為救済命令を発したことがあった。裁判所は、審問を経ないでした救済命令を違法であるとして取り消した。しかし、この判決によって審問を経ない…

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一九八回 労働契約④労働契約と期間 かって、労働契約は、その期間を定めるときは、1年を超える期間を定めてはならないとされていた。労働者を雇用する使用者は労働者に対して(労働者の親とも結託して)何をしでかすか分からないという警戒感を、国も隠して…

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一九七回 労働契約法③合意の原則 構想段階では大法典となるはずであった労働契約法は、一読すればよく了解することが出来るだろうが、契約的思考では当たり前の「合意の原則」(1条)を真っ先に掲げている。しかし、この点は良いのだが、構想段階の大法典主義…

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一九六回 労働契約法②合意の原則 労働契約は、労働関係の当事者たる使用者と労働者との合意によって基礎づけられる。その内容もまた、合意によって形成されることとなる。しかし、労働契約の内容の形成を労働関係の当事者の自由な合意に委ねる「当事者自治の…

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一九五回 労働契約法①合意の原則 合意によって他人に雇われて他人のために働くという働き方は、人間の労働の仕方という観点からすると、自然から食糧を採取し、あるいは穀類・動物を捕獲しさえすればじゅうぶんに生活が維持できた時代はあったことを考えると…

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一九四回 労働時間と時間外労働⑭時間外労働の拒否 時間外労働は、好ましいものではない。使用者が、労働者に時間外労働を指示または命令することがある。多くの労働者が、時間外労働をしてでもより多くの賃金を得たいと考えているようである。時間外労働を少…

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一九三回 労働時間と時間外労働⑫ (12)宿日直と監視断続労働 宿日直と監視断続労働は、コンセプトとしては異なるものである。宿日直は、労働者の本来の業務に付随的にかつ当番制で行われるものである場合もあれば、宿日直のみが本来の業務から解放されて行…

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一九二回 労働時間と時間外労働⑪ (11)代替休暇 労基法37条3項の協定は、時間外労働をした時間に対して支払われるべき割増賃金の代替として休暇を設定することを内容とする協定である。時間外労働時間に相当する割増賃金の支払に代えて通常の労働時間の賃金…

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一九一回 労働時間と時間外労働⑩ (5)時間外労働時間の限度 36協定を締結し、行政官庁に届け出ておれば、際限なく時間外労働が適法にできるなどと考えてはいけない。労働しすぎて死んでしまう労働者がいる現実は、絶句ものである。過労死は、国際的にも…

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一九〇回 労働時間と時間外労働⑨ 時間外労働(超過勤務、超勤、残業)は、法律上定められている労働時間の限度をこえて労働させること、または労働することである。時間外労働として問題となるのは、法外の時間外労働(法外残業)であって、使用者は労働者に…

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一八九回 労働時間と時間外労働⑧ 休日は、労働から解放される日である。毎週一回休日の原則は、4周間を通じて4日以上の休日がある場合には適用がない(労基法35条①②)。休日は、暦日による。暦日とは、「午前零時から午後12時までの24時間」である。休日は、…

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一八七回 労働時間と時間外労働⑥ 災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働と公務のため臨時の必要のある時間外労働 (1)災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働 表記に付き、使用者は行政官庁の許可を得て、その必要の限度において労基法32条…

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一八八回 労働時間と時間外労働⑦ 休憩時間 使用者は、労働時間が6時間を越える場合に少なくとも45分、8時間を越える場合には少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない(労基法34条1項)。 労働時間が6時間を越えない場合には、使用…

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一八六回 労働時間と時間外労働⑤ (C) 1年単位の変形労働時間制の初回の対象期間を除く対象期間をきちんとしておかないと、労働時間の規律がでたらめなものになってしまう。これを防止するため、労基法32条の4③の大臣の権限行使による規制を実現することと…

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一八五回 労働時間と時間外労働④ (3)1箇月を超え1年以内の変形労働時間(1年単位の変形労働時間制) (A) この変形労働時間制の許容条件は、使用者と過半数組合、過半数組合なき場合は過半数代表者とが書面協定に法所定の事項を定めることである。書面…

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一八四回 労働時間と時間外労働③ 変形労働時間と時間外労働に関する基本的な枠組みは、次のようになっている。変形労働時間は、労働時間の原則(労基法32条①②)を一定期間の平均として守られればよしとする労働時間制である。「災害等による臨時の必要がある…

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一八三回 労働時間と時間外労働② 時間外労働に対する法的な枠組みはどのようになっているか。労働者は、生身の人間だから、ロボットのように動き続けることはできない。人間は、労働し、食事をし、団欒し、遊び、眠るという生活リズムを守り続けている。労働…

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一八二回 労働時間と時間外労働① いわゆる時間外労働に関しては、時間外労働の法的な枠組みがどのようになっているかという問題、時間外労働に対してどのような処遇をもって臨むべきかと言う問題、時間外労働が労働災害の発生にどのように関わっているかとい…

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一八一回 黙示の意思表示と労働契約③ 黙示の意思表示による労働契約の締結や労働契約の延長(更新)は、理論上は成り立つものであるが、現実に労働契約の成立を認定出来る主要事実としての推認的行為の存在の主張立証は困難に違いないから、そう簡単に認めら…