錚吾労働法

第三回労働者と使用者ーその1ー
 労働法を学習する際に、最も重視すべき概念は、「労働者」と「使用者」です。法律の世界では、概念をきちんとしておかねばなりません。きちんとしなければなりなせんが、法律によって概念は異なります。
 労働基準法労基法)、労働安全衛生法(労案衛法)は、労働者を「職業の種類を問わず、事業又は事業所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」としています(労基法9条:労案衛法2条2号)。
 労働契約法(労契法)は、労働者を「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。」としています(労契法2条1項)。
 労働組合法(労組法)は、労働者を「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう。」としています(労組法3条)。
 それぞれの法律によって、「労働者」の定義に微妙な相違があります。相違は、各法律の目的が異なっているからです。同じ「職業の種類を問わず」と書いてあっても、労基法と労組法とでは、意味がことなります。
 労基法は「労働者保護法」であり、これ以下の労働条件で労働者を働かせてはいけないという最低基準を定めています。いかなる職業に従事する労働者に対しても、国は最低基準を設定して労働者を広く保護するとともに、その違反に対する国の監督権限(取り締まり権限)を広範囲に及ぼすために、職業の種類を問わないと言っているのです(憲法25条、同27条2項)。
            (続く)