錚吾労働法

第4回労働者と使用者ーその1の続きー
 労働組合法は、結社の自由(憲法21条1項;同28条)の結社の自由、団結の自由(労働者による結社の自由の行使たる労働組合の結成などの権利をより具体的に規定したのが団結権)を全国津々浦々の労働者に具体的に知らしめ、かつ組合活動を助成するために、職業を問わないとしている。
 労契法は、労働契約を支配する「合意の原則」を大黒柱とし(1条以下)、「契約の成立及び変更」(6条以下)、「労働契約の継続及び終了」(14条以下)、「期間の定めのある労働契約」(17条)について規律する。「職業の種類」と書いてないのは、本法では言わずもがなだからである。
次に、使用者の概念について記しておこう。
 使用者とは、労基法によれば、「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項についた、事業主のために行為するすべての者」である(労基法10条)。労安衛法及び雇用機会均等法は、使用者を事業者の観点から「事業を行う者で、労働者を使用するもの」(労安衛法2条3号)、単に「事業者」(雇均法2条2項、5条、6条など)としている。
 労組法は、使用者を積極的に定義することをせず、労働組合を定義するに際して、「使用者の利益を代表する者の参加を許すもの」を労働組合から除外したり(労組法2条1号)、不当労働行為の禁止の名当て人として「使用者は、次に掲げる行為をしてはならない」(労組法7条本文)としているに過ぎない。
 労契法は、使用者を「その使用する労働者に対して賃金を支払う者」(労契法2条2項)としている。
 労働者の定義と言い、使用者の定義といい、留意しなければならぬのは、法律による微妙な書き分けである。この書き分けは、各法律の目的に対応している。例えば、労組法は、自主的で使用者からは独立した労働組合を保護・育成し、労働者の経済的地位を向上させることを目的としているので、使用者を受動的にしか把握していないのである。従って、定義規定は、目的規定とともに熟読すべきものです。
 具体的な事柄はそれぞれ適当なところで述べますが、労働者と使用者の確定的かつ明確的な記述が困難な諸関係が増加しています。これは今に始まったことではありませんが、働き方の多様化や拘束や義務を嫌う若者の増加や、事業者による人件費の圧力逃れその他の諸事情がその背景にあります。