錚吾労働法

二九回 均等待遇ーその2
 均等待遇は、その1で述べた労働条件についてその差別の指標によって差別しないことを言います。パート労働者であっても、期間の定めのない労働契約を締結している通常の労働者とその職務内容が同程度の者、それに期間の定めのある労働契約を反復更新して、期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる者については、待遇差別をしてはなりません(短時労法8条1項2項)。
 労基法に言う労働条件に雇い入れが含まれるかどうかの問題は、消極に理解されています(三菱樹脂事件最高裁判決)。使用者の採用の自由の尊重と労基法は採用後について規律しているとのことから、導き出された結論でした。
 公務員関係では、採用や昇進に国籍条項というものがあって、採用されないとか、昇進試験の受験を拒否されたりすることがあります。特に問題となるのは、現業部門です。これには合理的な理由があるから違法ではないとされています(東京都水道局管理職選考受験資格事件・最高裁判決)。
 イスラム教徒に宗教的信条を実践するための職場での礼拝を禁止するのは、事実上困難でしょう。解雇などすれば、もっと大変なことになるでしょう。法的にどうかという問題ではないので、よく配慮しましょう。神や文化に関心がなく、利得のみ考えるような企業は、下品であると言っておきます。
 真に政治的信条のある人は、どこであってもその信条を語るでしょう。革命家ならなおさらです。しかし、そんな人物は、世界でそう何人もいるものではありません。宗教的信条であれ、また政治的信条であれ、その持ち主を採用するかどうかの自由は、会社にあります。会社内で政治活動はしないとの一札を入れさせて採用した場合、かかる特約の効力が問題となります。有効であるとされています(十勝女子商業高校事件・最高裁判決)。
 労働契約を締結して労働義務を負っているのですから、労働者は債務の本旨に従った履行をなすべきです(民法415条)。時間外政治活動の原則、企業外政治活動の原則を守って、活動してください。信条そのものは、内心の問題です。その自由は、誰も干渉してはなりません。しかし、それを行動として露出すれば、行為者責任の原則が免除されるわけではないのです。
 臨時に雇用される労働者たる地位は、社会的身分には当たりません。それは、生得の身分ではないからです。最近は、臨時工、季節工派遣労働者について、社会的身分による差別であるという宣伝ビラなどを見る機会が、多くなりました。法的に正しいかどうかは別として、社会的に大切な訴えです。よく耳を傾けて、改善するよう努めなくてはなりません。