錚吾労働法

四五回 労働時間ーその12労働時間法⑨
 朝から労働して昼には休憩する。労働者の多くは、このパターンで労働・休憩・労働を日々繰り返しています。労働者が働く職場は、様々です。一次産業でも、漁業の場合には、魚群を前にして休憩していてはおまんまのくいあげになるから、毎日同じ時間に休憩というわけにはいかないな。二次産業の生産会社ならば、大部分の労働者は、ほぼ一斉に休憩するでしょうね。三次産業の販売会社は、営業時間に全員が一斉に休憩することはないでしょうね。
 労基法34条1項は、労働時間が6時間を超えるときには45分、8時間を超えるときには1時間の休憩時間を定めています。使用者は、労働者に最低でも労基法所定の休憩時間を与えなくてはいけません。違反すると罰則の適用があります(労基法119条)。
 労基法34条2項ただし書の書面による協定が存在しなければ、休憩は一斉に与えられなければなりません。これを一斉休暇の原則と言っています。休憩は、午前の労働から解放され、食事、食後の軽い運動、束の間の昼寝など、疲労回復や健康の維持にとって重要です。休憩は、労働者にとって重要であるばかりでなく、使用者にとっても、作業効率の向上や欠勤予防に役立つものです。
 休憩時間は、労働者が労働から解放される時間であるので、労働者の自由に利用することが出来る時間です(労基法34条3項)。これを休憩時間事由利用の原則と言います。
 休憩時間を与えないことが違法であるのは、以上から明らかで、敢えて説明の必要もありません。これを民法的に説明すると、使用者には休憩時間を労働者に付与するという債務があり、与えない場合は債務不履行不法行為かになります。では、使用者の債務不履行責任または不法行為責任を労働者が追求するときに、どのようにしてその責任を追及したら良いのでしょうか。
 第1に、休憩を付与されなかったのでショックを受けたとして、精神的損害を慰謝料として支払えという方法が考えられます。
 第2に、休憩時間の不付与分の賃金相当額(または午前の労働と午後の労働の間の残業と見て)割増計算をした賃金を支払えという方法が考えられます。
 第3に、休憩時間を与えなったことを使用者の不法行為であるとして、生じた損害を請求するという方法が考えられます。
 裁判実務では、第1の方法が至当とされているようです。15分程度の食事時間しか与えずに、転炉の連続操業に従事させたという事例では、賃金相当額の損害賠償を求めることは出来ず、慰謝料のみを求めることが出来るとされました(住友化学工業事件・最高裁判決・名古屋高裁判決)。
 以上とは別個の少なからず紛糾した問題は、休憩時間中の政治活動や組合活動の可否の問題でした。政党員たる労働者による政党の機関紙や宣伝文書の配布または演説は、休憩時間は自由に利用して良いのだから、自由になし得るのでしょうか。労働組合の組合員は、休憩時間中に自由に組合活動をしても差し支えないのだろうか。
 政党活動にせよ、また組合活動にせよ、それが企業の施設内で行われる以上は、その施設管理権の乱用にはならない適切な行使の範囲内での制約を受けることになるでしょう。休憩は、上に述べた重要な意義を有しているので、これらの活動が労働者のリフレッシュを妨げる程度に至ったり、態様のものであったりすれば、その限りにおいて、使用者側からする規制の対象となるのです。自分の自由は、他人の不自由であってはならないからですよ。分かりますか。
 こんなことは冷静になれば、誰にでも理解することができるでしょう。一生懸命になると、自分にも経験がありますが、他のことは目に入らないからね。正しいと思ってすることは、ミッションだから、使命感に根ざしているよね。でも、休憩の実を失わせるのは、まずいよな。ここん所のバランス感覚を身につけてほしいな。事例は、山ほども有るから、調べてちょうだい。
 外国人の労働者の多くなってきました。礼拝に文句つけたら、使用者として落第印つけてあげよう。休憩時間どころか、労働時間中にも礼拝しなければ神様に罰せられるのに、どうして駄目っていえますか。