錚吾労働法

第九回 使用者と労働者
 労働組合のナショナル・センターの下に、さらに労働組合が組織されています。例えば、連合に組織されている自動車総連には、殆どすべての自動車産業の各労働組合で組織している全トヨタ労働組合連合会などの12の労連が加入しています。
 この12の労連は、1,114組合、77万人からなっています。そして、20支部、6、3万人を擁するトヨタ自動車労働組合が、その下にあります。自動車産業は、裾野の広いものであり、それに応じた労働組合組織となっている。
 自動車総連が擁する組合員数は、連合全体が擁する組合員数の1割を優に凌駕している。自動車産業は、日本経済の牽引車であり、そこでの労使交渉によって決せられる賃金相場は、労働者全体の賃金相場に決定的な影響力を有している。
前に述べたように、日経連の経団連への吸収以後、経団連による企業利益追求がやや性急になっているので、労働組合の役割へに期待がより強いものとなっている。しかし、労働組合も、名ばかり管理職非正規労働者、短期間労働者季節労働者契約社員、パート労働者、派遣労働者、外国人実習労働者の組織化には熱心ではなかった。
 熱心でなかったのには、理由があった。企業のリストラによる人件費圧縮、従業員数の減少、長期の不況は、労働組合を正社員の守護に走らせ、その他の労働者や他の使用者の雇用する労働者にまで目が向かなかったのである。ここに、合同労組の活動の余地が拡張したが、企業のみならず、労働組合にも指揮されたくないという労働者が増加しているようにも見える。合同労組といえども、苦渋を飲まされることがある。