錚吾労働法

一四回 賃金ーその1
賃金とは、使用者が労働の対償として労働者に支払うべきものであり、その名称を問わない。賃金の名称は、賃金、俸給、給与、手当、報酬など様々ですが、労働の対償としての性格を有するものは、賃金です(労基法11条)。民法では、報酬と表現されています(民法623条)。民法では、雇用、請負、委任について報酬という表記で統一されています(民法632条、648条1項)。
 労基法は、雇用、請負、委任の相違をより明確にするため賃金という表現をさいようしているのです。雇用の目的は、労働である。これに対して、請負の目的は仕事の完成で、委任の目的は本人になり変って法律行為をすることです。場合によっては、特に、これらを区別しがたいことがありますが、使用属性の有無によって賃金を支払われる雇用であるかどうかを判定しています。
 賃金を支払われる労働者であれば、労災保険法上の労働者でもあり、また社会保険料の労働は負担分を天引きされることのいなります。従って、賃金を支給される労働者であるか否かは重要な問題です。それを解決するための上に示した基準とともに記憶しましょう(横浜南労基署長事件・最高裁判決、藤沢労基署長事件・最高裁判決)。
 賃金は、労働者にとっては、本人はもとよりその家族の生活を成り立たせる原資となるものです。従って、賃金額についても国による干渉が行われています。最低賃金法が、そのための法律です(憲法27条2項)。最低賃金は、地域別、産業別に定められており、使用者をこれを下回る賃金を支払ってはいけません。