錚吾労働法

十三回 労働条件とは何か
 労働条件は、労働者が使用者のために労働する際のさまざまな取り決めがありますが、特に働きかたや処遇に関するものであると言ってよいでしょう。その代表的なものは、賃金、労働時間でした。しかし、賃金に関する事柄も、労働時間に関する事柄も実際は多岐に亘ります。職場の安全・衛生に関わって、禁煙、喫煙室の設置、冷暖房の適切な管理なども、今や労働条件と考えてよいでしょう。
 危険を伴う労働である場合には、労働者による危険の引き受けなる理屈は通用せず、危険防止管理体制を講ずることも労働条件であると言ってよいでしょう。男性と女性との均等処遇は、実現を迫られている労働条件であるでしょう。
 企業の活動範囲の拡大によって、海外勤務、単身赴任が増加しているばかりでなく、勤務地の政情いかんでは危険に身が曝されるとも限りません。家族と別れて暮らすのか、家族同伴で赴任可能か、住宅はどの程度のものか、緊急の場合のバックアップ体制いかん、家族再会の頻度と交通費などなど、労働するに際して決めておくのが、賢明でしょう。
 労働者の健康管理も、重要な労働条件です。疾病ある者には疾病の状況に応じた適切な管理が必要です。健康の保持は、労働関係の継続性を考慮すると、労働者にも健康維持義務があると思われます。
 能力主義成果主義は、会社は仕事の結果・成果を受領しさえすればよいとの思考を生みだし、また仕事のアウトソーシングを促進する原因となります。それに伴って、労働条件保障の主体は誰なのかという問題が発生してくるでしょう。
 以上、簡単に述べたように、労働条件は、多彩な広がりをもっています。また石綿被害のように、労働条件が確保されていないような職場からは、命と引き換えに労働したことになった事例が多数出てきています。労働条件は、ゆるがせに出来ない問題です。