錚吾労働法

二〇回 賃金ーその4超過勤務(残業)
 法定の労働時間の上弦を超えて労働させた場合、使用者は手当を支払わなくてはならない。使用者が、この手当の支給を免れるために種種工夫することがある。例えば、名ばかり管理職の多数配置が、問題となっている。また労働時間管理が可能であるのに、みなし労働時間制(労基法38条の2の1項)を採用することも問題となっている。
 名ばかり管理職は、管理職には管理職手当が支給されること、管理職は使用者側の者(労基法10条)となることから、時間外割増賃金を支給しなくてもよいことに悪乗りしているのです。このような悪知恵は、残念なことです。
 みなし労働時間制の下にある労働者は、所定労働時間労働したものとされます。しかし、労働の場所が限定され、そこに上司もいる場足には、労働時間の算定が困難であるわけはなく、みなし労働時間の適用は、不可能だと言ってよいのではなかろうか(ほるぷ事件・東京地裁判決)。
 労基法36条の協定がない場合の時間外労働は、違法です。しかい、違法な時間外労働をした労働者に対しても、使用者は時間外割増賃金を支払わなければなりません(小島撚糸事件・最高裁判決)。
 年棒制の場合にも、割増賃金支払い義務が生ずるであろうか。年棒制も、割増賃金を支払ないための方便として使われる可能性はあるでしょう。この制度を採用する場合、基本給と割増賃金とを一体化した賃金を年棒学としているとの主張がなされるでしょう。しかし、特に年棒制による合理的な理由がなければ、割増賃金の計算を出来なくする意図があったとされるでしょう。このような年棒制合意は、無効と考えられます(創栄コンサルタント事件・大阪高裁判決)。
 歩合給の場合は、どう考えたらよいでしょうか。タクシー業界では、運転手に歩合給が支払われ、時間外労働、深夜労働が広く行われているばかりでなく、通常労働時間、時間外労働、深夜労働にそれぞれ対応する賃金の区別がなされていないことがあります。この場合荷は、労規則19条1項