錚吾労働法

二一回 賃金ーその5争議行為と賃金
 争議行為と賃金の関係に関して、ノーワーク・ノーペイの原則が語られています。これは、和製英語ですが、両者の関係を考えるときには便利な考えであるとは言えます。
 しかし、争議行為の多様性を考慮しますと、この原則は限定的に用いなければなりません。ストライキは、働かないということですので、そこには労働の対償としての賃金の発生の余地がありません。その意味においてのみ、この原則は理解されるべきです。
 ストライキは、集団辞職という考えかたでは、全賃金が支払われません。わが国では、ストライキは集団辞職とは考えられていません。それは、労働関係の一時的な停止で、契約関係は存続しているのだとされています。
 そうすると、家族手当や住宅手当は、カットすることが出来ないことになります。通勤費は、全日ストの場合はカットできるでしょうが、時限ストの場合にはカットできないでしょう。
 問題なのは、ストライキの態様によっては賃金カットが容易に行えないことです。指名ストで誰がスト中なのか分からないという場合もあります。部分ストではあっても、全体が停止状態になってしまうことがあります。この場合、ストに参加してない者であっても賃金カットできるでしょうか。
 誰がスト中であったかが分からなければ、賃金カットの仕様がありません。部分ストの場合で事業場全体のマヒが生じているときには、ストライキを決行した組合の組合員の賃金カットは出来るでしょう。しかし、組合員であるかどうか分からなければ、対処できないでしょう。
 怠業(スローダウン)の場合は、どうでしょうか。いつもと違って
ノロく働くのです。また、我が国ではこれまではないですが、いつもよりハイペースで働く争議行為もありえます。これらをどう考えたらよいでしょうか。宿題ですから、よく考えてみてください。