錚吾労働法

二三回 派遣ーその1派遣の基本的な関係
 派遣労働者が、ずいぶん増えました。働き方の多様化の掛け声の下、親世代に対する企業のリストラなどを見聞きした若者にとっては、この掛け声は魅力的でした。企業にわが身を拘束されたくない若者たちは、アルバイト感覚で労働することができると甘く考えたのでしょう。
 他方、企業は、高度成長期から停滞期または減退期という新局面に直面し、過剰人員の整理を実施し、正社員の員数を抑え込むとともに、正社員の地位を守ることとし、非正規労働者を景気調整用の員数とすることとしたのです。
 派遣労働は、確かに働き方の多様化の一翼をになっており、それによって恩恵を受けているひともいますが、その他の派遣労働者にとっては収入の不安定や、失職の高い可能性など、あまり良いことはなさそうです。
 労働者派遣は、派遣事業者が雇用する労働者を、派遣事業者と派遣労働者の雇用関係の下に、他人の指揮命令を受けて、その他人のために労働に従事させることを言います(派遣法2条1号)。派遣には、紹介予定派遣もあります(派遣法2条6号)。
 派遣労働者が派遣事業者に常時雇用されている者のみである場合には、この派遣事業を、特定労働者派遣事業と言います(派遣法2条5号)。特定労働者派遣事業でない労働者派遣事業を、一般労働者派遣事業と言います。
 特定労働者派遣事業以外のものを一般労働者派遣事業と言います(派遣法2条4号)。一般労働者派遣事業で労働者を派遣する場合、派遣先への派遣期間に相当する期間、派遣労働者と派遣元たる派遣事業者とが雇用契約を締結します。労働者は、それに備えて、派遣事業者に登録しておきます(登録派遣と言います)。
 労働者派遣には、紹介予定派遣もあります(派遣法2条6号)。この労働者派遣は、労働者派遣と職業紹介とがミックスされたもので、
労働者派遣事業者が職安法などによる許可を得て、職業紹介を行い、または行うことが予定されているものです。このシステムは、職業紹介によって派遣労働者が派遣の終了前に派遣先に雇用される旨、派遣労働者と派遣先との間で約されるものもふくみます。
 派遣業者は、時として、目の敵とされることもあります。しかし、最早、派遣労働者は、労働者として確立しており、企業も、その存在を前提しつつ、事業計画、採用計画を立てていますので、改善の方向は、派遣労働者の処遇の改善でなくてはならないと思います。