錚吾労働法

二四回 派遣ーその2派遣労働者との紛争
 派遣労働者と派遣事業者、派遣労働者と派遣先企業との紛争が、増加しつつあります。また、派遣労働者労働組合も結成されており、派遣労働者の組織化に熱心な合同労組もあります。派遣元または派遣先に対して、労働組合が団体交渉を求めたり、派遣先に対する雇用継続を求める訴訟が起こされたりする事例は、増加することのなるでしょう。
派遣先の正規労働者と派遣労働者との間に、差別事件やセクハラ事件が発生するかも知れません。場合によりけりですが、派遣元も派遣先も不法行為や配慮義務違反の債務不履行の責任を問われる可能性があります。
 3K的な仕事では、派遣労働者が怪我をしたり、健康を害してたりすることがあります。派遣可能な業種の拡大は、3K的仕事への派遣が急増し、日系外国人の派遣も少なくありません。派遣会社が、。労災となる可能性のある怪我などの労災認定手続きに派遣会社が協力しないなどが、主張されます。派遣元も派遣先もいい加減で、健康保険、厚生年金保険、雇用保険の手続きが曖昧な場合もあります。
 派遣先企業の労働組合が相手にしてくれないので、合同労組が、派遣元企業に団体交渉を申し入れ、非協力によって被った労働者の精神的ショックに対する慰謝料の支払いなどを求めて来るのです。また、派遣先の指揮命令権限ある者の苦情への不対応を配慮義務違反として、派遣先の責任を追及することもあります。登録派遣専門の小規模派遣もと会社は、この種の諸問題が発生したときに対応できるのかどうか、疑問です。
 期間の定めのある労働契約の繰り返しの更新によって、この労働契約は期間の定めのないものとなるという理屈があります。この理屈は、派遣労働者と派遣元会社との関係において主張されることもあるでしょう。派遣労働者が派遣先で労働関係を繰り返していたときに、この理屈のように期間非限定の労働関係へと変質するのでしょうか。
 他方、派遣労働者の派遣先の正社員化の問題も、あります。「雇い入れるように努める」(派遣法40条の3)ことと、「雇用契約の申し込みをしなければならない」(派遣法40条の4、40条の5)ことは、同じではありません。詳しくは、派遣法を熟読していただいと思いますが、対応を誤ることのないようにしましょう。企業別労働組合も、使用者と協力して、適正な派遣就業の確保の実現に寄与すべきである。
 労働審判法の改正も、不可欠であろう。派遣労働者の経済状況を考慮すると、弁護士が付かねばならない審判制度は疑問である。労働基準局のあっせんにも、問題がある。職員の労働契約に対する研鑚を望みたい。相談の段階で、かなりのことが出来なくてはならない。この領域での紛争は、増えることがあっても、減ることはないだしょう。どのようにしたら、紛争を適切な解決へと導くことが出来るのか、制度発足時の熱意を取り戻してほしい。厚生労働省は、もっと深刻に考えるのでなければならない。