錚吾労働法

二八回 均等待遇 その1差別の指標
 労基法は、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」(3条)旨を定めています。ここでは、差別の指標として、国籍、信条、社会的身分が指摘されています。
 憲法は、人種、信条、性別、社会的身分、門地を差別の指標としています(14条)。労基法3条・4条がこれを受けての定めであるのは、言うまでもありません。
 「国籍」による差別は、無国籍者に対する差別を含みます。様々な事情で、無国籍が発生します。日本人でないことを理由とする労働条件差別を禁止する趣旨です。在日朝鮮人その他在日外国人に対する労働条件差別は、あってはならないことです。
 「信条」には、宗教的信条(憲法20条)の他に政治的信条(憲法19条)も含みます。活動熱心な信者の宗教活動や政党員の政治活動、あるいはその内心を警戒したり監視したりすることがあります。日本共産党員に対する労働条件差別が、事件化することが多いと言えます。
 「社会的身分」は、生まれついての社会的身分を言います。法制上の身分制度は存在しませんから、社会的身分とは社会に残存する身分をいいます。後天的に取得する地位、例えば労働組合員たることは、社会的身分には当たりません。組合員差別が不当労働行為(労組法7条)になるのは、別の話になります。