錚吾労働法

三〇回 男女同一賃金の原則ーその1原則の意味と問題点
 労基法は、「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない」(4条)としています。この定めは、当たり前のものだと考えてはなりません。当たり前ならば、どこであろうとこの原則は遵守されているでしょう。頭で理解出来ても、実践するのは難しいのです。
 この原則は、評価・評定がきちんとされていることを予定しています。評価・評定するためには基準が不可欠です。販売の場合ですと、売上高という客観的な基準を用いることが出来ます。賃金は生活給でもありますから(労基法1条1項)、売上高一辺倒というわけにもいかないのです。
 能力に応じて賃金を支払うというのは、誠に結構なことですが、能力抜群なことが誰の目にも明らかなので、その人が他に別して高額報酬を獲得しても何の問題もないというようなことは、滅多にあることではありません。ドングリの背比べ状態で大した差もないのに、能力で賃金額を決定するといえば、査定者自身が根を上げて自己評価もしてくれと逃げの手を打つのが関の山でしょう。
 賃金の構成が、男女で違うという場合があります。あるいは、賃金の構成が同一であっても、いずれかの性には支給しない費目がある場合もあるでしょう。賃金の構成が男女で異なる場合には、賃金表そのものが男女別に作成されているケースと、そうではないが費目の金額に差がつけてあるケースとがあるでしょう。
 最近は、能力だ業績だという企業経営者が増えているようです。企業にとっては、また株主にとっても、利益を獲得してくれる労働者こそが大切で、定年制などは愚の骨頂だということになるでしょう。年齢差別は、このような考えから出てきます。しかし、定年制をどうするかという問題以前に、定年年齢が男女別になっているようなところもあるのです。