錚吾労働法

三一回 男女同一賃金の原則ーその2具体的な問題
学生の就職率が惨憺たる低さですが、働くことに大した意欲なく会社訪問したり、しなかったりの学生が増えていますので、企業に見透かされているのです。教師として思わず愚痴ってしまいましたが、本題に入りましょう。
 実を言いますと、女性労働者の採用を結婚までの就労、妊娠・出産までの就労と考えていた使用者がおりました。掃除とお茶くみが、女性の労働の当然の内容であるとも、考えられていたようです。こんなことがなされていた時代には、女性労働者の賃金は、男性に比べて低く設定されていたのでした。
 さて、女性の賃金が男性の賃金より低額設定されている場合、使用者な、なぜそうしているのかについての合理的な根拠を立証しなければなりません。この立証は、ほとんど不可能と言ってもよいでしょう。言い換えますと、これは男女間の賃金差別に相違ないと推定されてしまうということです(秋田相互銀行事件・秋田地裁判決)。
 女性の初任給そのものが、男性の初任給より低額設定されている場合も、あるでしょう。外国語能力の点でそうする合理的理由があったとしても、女性が努力して男性労働者とそん色ない能力を持つにいたったときには、使用者はそれをがん性の平均賃金額にまで是正しなければならないとされた例があります(日ソ図書事件・東京地裁判決)。
家族手当や扶養手当を男性には支給し、女性には支給しないという扱いは、違法でしょうか。同一職場の共稼ぎ労働者の場合、そのどちらかに支給し、他には支給しなくても何ら問題はありません。では、妻の収入が130万円を超えていても男性労働者に家族手当しきゅうするのに、夫の収入が130万円を超えていたら女性労働者に家族手当を支給しないというのは、どうでしょうか。こんなことは出来ないと心得ておいて下さい(岩手銀行事件・仙台高裁判決)。
 女性の独身労働者に26歳据え置き給を支給するというのは、許されません。非世帯主で独身であっても、男性には据え置き給の制度がなく、非世帯主で独身の女性労働者は、何歳になっても26歳と見做すというのですから、無茶な話であると誰もが合点するでしょう(三陽物産事件・東京地裁判決)。では、この据え置き給制度が、女性が広域異動に応じるのが難しいことを根拠としているとすると、どうなるのでしょうか。この会社は、労働基準監督署に是正勧告されてから、この理屈を捻りだしたのです。こういうのを、屁理屈といいます。
 昇進・昇格基準そのもの、またはその運用で女性差別がなされることがあります。これらの問題は、雇均法との関連で次回に述べます。