錚吾労働法

三五回 労働時間ーその2「1週40時間1日8時間」
 労働時間規律の最も原則的な定めは、1周40時間1日8時間です(労基法32条1項・2項)。休憩時間は、含まれません。休憩時間は、労働時間の途中に与えられますが、労働時間が6時間を超えるときは、少なくとも45分、8時間を超えるときは少なくとも1時間となっています(労基法34条1項)。休憩時間は、長ければ良いというものではありません。長くすれば、それだけ会社にいる時間が長くなってしまうからです。
 1週40時間としているには、週休2日制を意欲したからです。もっとも、使用者は、毎週すくなくとも1日の休日を与えればよい(労基法35条1項)とされているので、週休2日制が保障されているというわけではありません。歯切れの悪い説明になっちゃうよね。立法者に思いっきりというものが無いからなんだね。
 40時間、8時間と言うのは、実労働時間ですよ。じゃあ、この時間を誰がどのようにして、確認するのかな。時間に対して賃金を支払うわけだから、使用者が40時間、8時間ちゃんと働いたかを確認しなきゃならないな。そうするのに便利なのが、タイムカードだ。タイムカードへの打刻は、労働者自身が行っている。労働者が少なければ、現認ができるから、タイムカードは必要ではないよ。現認が困難なくらいに労働者が多数の職場では、タイムカードは重宝だよね。不正打刻なんてもんが、あるらしいよ。遅刻・早退の場合などに、定時に出退勤したように、同僚に依頼して打刻したりすることで、してはいけないことだよ。他にも不正打刻の手口はあるけど、言わない。
 外回りの労働者の労働時間をどのように確認したらよいかも、問題になる。みなし時間制といって、8時間働いたと見做しちゃうというやり方もあるのさ(労基法38条の2)。ただし、現在は電子機器が発達しているから、労働時間管理は外回りの場合であっても、可能であろうから、安易にみなし時間とするのは、好ましくはない。自己管理・自己申告というやり方もあるが、結局は、信用ならんということで、裁量労働・みなし労働時間制が導入されたんだ。
 裁量労働という響きはよい。しかし、労働を自己裁量に委ねるというと、労働者の自由が拡大した印象になる。時間の管理を労働者の手にゆだねて、時間外手当の支給を免れるというのは、そう易々と許してはならないことだから、使用者の手による時間管理が可能なのに、そういうやり方をすることについて、国の監視を強化しなければならないだろう。