錚吾労働法

三七回 労働時間ーその4労働時間法①  
 労働時間は、賃金と並んで労働条件の中でも最も重要なものだと考えられています。労働時間は、実労働時間だということに注意しましょう。労働時間と賃金は、密接に関連しているので、労働者は不明なことがあったら、すぐ使用者に説明して貰いましょう。もっとも、使用者が労働条件の明示義務をきちんと履行しているのに、労働者が分からないと言うのは困りものですよ。
 労働時間は、一律一様ではなく、幾つもの種類があります。
 その第一は、始業時間と終業時間が全労働者に共通している労働時間制度です。この制度は、時間が規則的なため、労働者の自由時間の活用や家庭生活の安定というメリットがありますから最も理解しやすいせいどだと言えるでしょう。使用者にとっても、時間管理が容易であり、労働者に満足を与えることが出来るというメリットがありますが、業務の繁忙や、不時の受注などの変動要因に対処するのが難しいという難点があります。その難点は、時間外労働で対処してきたと言えます。
 その第二は、フレックスタイム制度です。この制度は、始業午前9時終業午後5時という標準勤務時間を定めるとともに、労働者が決定する午前11時までの出勤時刻と午後7時までの退勤時刻の設定し、さらに全労働者が勤務していなければならない例えば午前11時から午後4時の時間帯(コアタイム)を設定するというものです。この制度の労働者にとってのメリットは、通勤時間をずらすことでユッタリ通勤出来る、仕事に役立つ情報を取得することができる、子供を幼稚園・保育園に送迎することが出来る、自由度が増したと感ずることができるなどです。他方、会社にとってのメリットは、労働者が出退勤の疲労を感じなくなって、仕事がスムースに運ぶようになる、労働者の会社に対する満足度が向上するなどですが、時間管理が面倒である、エネルギーコストが上昇する等のデメリットもあります。
第三は、変形労働時間制です。この変形労働時間制度は、主として、業務に繫閑があるとかの場合に、使用者が労基法所定の手続にしたがって過半数労働組合または従業員の過半数を代表する者との書面による協定をもって所定の事項に合意したときは、1週40時間1日8時間の定め(労基法32条1項)に関わらず、特定の週、特定の日にそれを超えて労働させることが出来るというものです(労基法32条の2以下)。変形労働時間制度については、さらに後述します。
 第四は、みなし労働時間制です。これは、労働時間の一部または全部について事業場外で労働したため労働時間の算定が困難なときには、所定労働時間を働いたものとみなすというものですが、当該の業務を遂行するためには所定労働時間を超えて労働することが必要なときには、その労働時間働いたものとみなされます。
 第五は、裁量労働時間制度のみなし労働時間制です。これは、業務の性質上、その遂行を労働者の裁量に委ねることとした対象業務の労働時間として算定される労働時間を言います。裁量労働に従事する労働者は、その時間を労働したものとみなされます。
 第六は、災害等による臨時の必要がある場合の時間外・休日労働制です。これは、災害等の被災から事業所を護り、復旧させるための臨時応急の労働の場合に対応しようというもので、行政官庁の許可の限度において、労基法32条ないし32条の5の労働時間若しくは40条の労働時間を延長し、休日に労働させることが出来ます。
 第七は、時間外・休日労働制です。これは、労基法36条所定の書面協定を行政官庁に届け出て、労働者を労基法32条ないし32条の5、もしくは労基法40条の規定にかかわらず、書面協定の定めるところに従って、時間外労働させ、休日労働させることができるというものです。
 以上、分かりにくい説明で恐縮汗顔のいたりですが、ものがものだけに、仕方ありません。具体的なことは、紛争を材料にして説明したいと思います。ただし、労基法の労働時間の定めをよく辛抱して読んでくださいよ。