錚吾労働法

三八回 労働時間ーその5労働時間法②
 労働時間法が複雑化したとしても、1週40時間1日8時間が、労働時間法制の根本です。まずは、この原則規定に関わる紛争について考えましょう。
 タイムレコーダーの設置場所が会社の門であったり、あるいは門たら離れたじっさいの労働場所であったりすると、労働時間はどこから計算されるのでしょうか。
 実際に労働を開始するまでに、そのための準備をしたり、体操をしたりすることがありますが、労働時間はどの段階から計算されるのでしょうか。また労働が終了してからの後かたずけや整頓なども、労働時間に参入されるのでしょうか。
 これらの問題は、きわめて古典的な問題ですよね。労働法を多少なりとも勉強したことのある人なら、これらは、かっては、労使間の先鋭な対立を来たした問題であったことを思い出すに違いないよね。製鉄会社のように広大な敷地を有する事業所においては、門にタイムレコーダーが設置してあれば、入門時が労働時間の開始時点だと主張されることとなり、実際に労働する職場での労働開始時刻との間に差が生じてしまいます。それではと、実際の労働場所に設置すると、門から労働場所に至るまでの時間は時間外労働時間じゃないのかと主張されることになったのです。門に入れば、危険もあるのだから、門からだといって譲らなかったのです。
 労働契約の労働義務は、労働者が使用者が指定した場所で働くということです。勝手に労働者が決めた場所から労働時間が始まるのではありませんよ。タイムレコーダにを何時までに打刻せよという指示がされているはずですから、労働者は、指定時間までにそこにいかなければなりません。入門時に身分証明書や社員証の提示を求められる場合は、そこで会社の指示が始まっているから、そこから労働時間を計算せよという滅茶を言う者達もいました。これは、入構チェックの問題と労働時間の問題との区別が出来ない者達の主張だったんだよ。
 労働開始前に、体操でもして体をほぐしておくか。というようなことは、よくあることでしょう。体操したんだから、労働したんだと単純に言われても、困っちゃうよね。会社が体操を義務付けている場合は別ですよ。また、重いものを持ち上げるような作業では、足腰を柔軟にしておかないと怪我をする可能性があるのでは。体操でも、労働と密接不可分のものだとされる可能性があります。そのようなときには、体操時間も労働時間に参入されることとなるのでは。だから、何体操?そんなものが労働時間になるわけがないだろうなどと、単細胞なことを言ってはいけないんだよ。
 二番目の問題については、応用問題としますから、考えてみて。