錚吾労働法

五三回 裁量労働 その1「専門業務型裁量労働
 企業内で一定の業務を行うときに、プロジェクト・チームを組んでいることがあると思います。そしてこのチームの行う開発業務についてはこのチームに裁量権を与え、使用者の側からは指揮・命令の余地が無いような場合が、あるでしょう。専門的な事柄は、社内の限られて専門家に委ねるのがよく、例え社長であっても、指示したりすると、いらぬお節介どころか、仕事の邪魔になるという場合があります。「だまっててほしいよな」と思っても、相手が社長では中々言えないね。
 専門業務型裁量労働は、社内の専門家チームに専門的業務を委ねるシステムとして考案されたものなんだよ。労基法38条の3の定めがこのことに関してのものです。労基法所定の手続きを踏んで行うことの出来る専門業務には、次のもの等があります。          「新商品や新技術の研究開発」                 「情報処理システムの分析又は設計の業務」
 「新聞若しくは出版の事業における記事の取材・編集の業務又は有  線ラジオ放送番組の制作のための取材若しくは編集の業務」   「衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業  務」  
 「放送番組、映画等の製作の事業におけるプロデゥ―サー又はディ  レクターの業務」
 これらの業務は、専門業務型裁量労働制にふさわしい業務であるとされています。専門業務型裁量労働制が行われるようにするためには、過半数代表組合または従業員の過半数を代表する者との書面による協定がなければならない。この書面協定にどんなことが規定されなければならないかは、労基法38条の3の1号ないし6号に定めてありますから、よく読んで頂戴。
 1号には、「業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難」と書いてあるだろ?では、専門業務をチームで行う場合に、チーフが例えば時間を決定したり業務の指示をしたりしているとすると、これは、専門業務型裁量労働制だと言えるのかな。答えは、ノーだよ。どうしてか分かるかな。ノーの理由は、チーフが使用者として振る舞っていらからなのさ。もう一度、法文をじっくりと読んでみて。もう分かったでしょ。
 2号には、「労働時間として算定される時間」と書いてあるね。この時間は、1日についての時間を意味してます。専門的業務を遂行するために必要な1日の時間です。書面協定の有効期間は、3年以内とするのが望ましいとされています(平成15・10・22基発1022001)。必要な時間は変動するので、期間を定めておいて、期間満了後に新たに必要な時間を定めるのが望ましいのです。この意味合いにおいて、3年以内といっているわけ。
 2号の重要な点は、2号で定めた労働時間を労働したとみなされることになることです。「みなし労働時間」になるわけです。この「みなし」は、年少者と女性の労働時間には、適用ありませんので、注意が必要です。また、休憩、深夜業、休日に関する労基法の定めは、「みなし」の場合でっても排除されませんよ。注意して頂戴。