錚吾労働法

五四回 裁量労働 その2「企画業務型裁量労働制
 企画業務型裁量労働制は、事業場内に労基法38条の4に規定している「委員会」(「当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会」などと長ったらしい名称の委員会です)が存在する場合におこなうことができます。                    そしてこの委員会は、使用者と当該事業場の労働者を代表する者をを構成員とするもの委員会でなければなりませんよ。委員会が設置されていなければ、企画業務型裁量労働制の採用の余地はありませんから、気をつけて下さい。なお、この委員会がどうあらねばならないかは、労基法38条の4②項に書いてありますから、ちゃんと読んでね。
 企画業務型裁量労働制は、この委員会がその構成員の5分の4以上の多数による議決をし、議決を行政官庁に届け出た場合の裁量労働制です。議決しなければならない事項は、労基法38条の4①項1号ないし7号に規定されている事項です。ややこしいでしょ。労働者が読んでちゃんと理解出来なかったら労基法じゃないという論法からすると、下手くそな条文。こんな役所風文章じゃ、立法の仕方としては合格点じゃあないな。そんなこと言ってても仕方あんめい。説明することにするよ。
 事業の運営に関しての企画、立案、調査、分析の業務を適切に行う際に、それに社長等がごたごた言ってたんじゃあ仕事がわやになっちゃうから、黙っててもらって、労働者の裁量に委ねなきゃならん。業務の遂行の仕方とか時間の配分について、使用者が口出ししないようにするということを、まづは委員会で決議しなきゃならんのさ。
 マーケッティング等の市場調査、為替相場動向の調査、アンテナショップの設置企画・場所の選定・消費者行動の調査など、また最近では大学受験における進学先の決定過程の調査なんてものもあるな。こんなのは、頭の回転が速くて、脚力もあって、パソコン使いこなせるような人じゃないと、うまくできないんじゃないかな。年寄りは口出さない方が賢明じゃないのかい。
 次に決議しなくちゃならないのはだね、このような業務をちゃんとこなすことができる労働者の範囲なんだ。これらの労働者の労働時間は、「みなし労働時間」になるから、範囲をきちんとしとかないと大失敗することになるから、ちゃんとしておこう。範囲外の労働者が企画業務の対象業務に従事するようになることは、妨げないのではないかな。これに対して、派遣労働者をこの範囲に含ませることは、出来ない。出来ないことは、しないように。
 確定した範囲に属する労働者の労働時間として算定されることになる時間を、決議しなきゃならないね。決議された労働時間が、実際の労働時間に関わらず、労働した時間と見做されることになるから、ああでもない、こうでもないなどと後から揉め事が生じないように、確定的に決めなくっちゃいけないよ。
 みなし労働時間の下で不規則な就業時間になることが予測されるので、対象労働者の健康管理、福士の増進、苦情の適切かつ迅速な処理がなされなければならない。この点を怠ることのないように、使用者の格別な配慮が求められることになるだろうね、使用者の配慮義務は、重くなるわけだ。この自覚がない使用者の所では。企画業務型裁量労働制はよしな。ややこしい制度だね。当面知っておかなくちゃならんことは、これくらいで良しとしよう。