錚吾労働法

五七回 計画停電と休業
 東電の原子力発電所の暴走によって、今後様々な諸問題が発生して来ることになるでしょう。第2グループに入っている我が家では、夜の暖房ができず、震えあがってしまいました。近隣のホテルは、休業しているところがあります。喫茶店、お土産物屋なども、閉店しているところがあります。
 結構多くの労働者が、ホテルなどに雇用されています。自家発電で対応できるホテルは、限られています。しかし、大地震、大津波それに原発事故では、観光客の足がストップするのも、仕方のないことです。新幹線は別として、在来線はかなりの間引き運転です。さて、東電の計画停電によって、休業せざるを得ない事業所は多いと思います。
 電流が停止されて操業できなくなったときには、使用者の責に帰すべき休業であるとは言えないでしょう。天災による休業に近接した休業といってよいでしょう。確かに、地震津波によって社屋が流失したり塩水につかり、汚泥にまみれていて、企業活動が出来ない場合とは異なりますが、仕事を労働者にしてもらう状況にない点では、共通した面があるのです。使用者の責に帰すべき休業ではないので、使用者は賃金を支払う義務がないのです。
 しかし、使用者が休業を宣言しないで、労働者が出社して待機しているのであれば、賃金を支払わなければなりません。全日停電で営業日に全く営業できなくても、使用者が休業しないでいるときも同様です。休業するとの明確な意思表示をしないでおいて、後日あの日は休業だったから賃金を支払わないということは出来ないので、注意しましょう。
 計画停電と言っても、消費者の都合も考慮しつつ行うことなので、「計画的」に運んでいるわけでもなさそうです。明日は停電だと公表されたので急きょ明日は休業すると宣言したのに、停電にはならなかったので、当日に休業しないとの通知をしたが、従業員が確保できなくて休業するということもあるでしょう。出社した労働者にはその日の賃金を支払わなければなりません。出社しなかった労働者には支払う必要はありません。
 地震後の消費者の出控えによって、営業しても利益が確保出来ないとの理由で、休業する場合もあるでしょう。これは、使用者の責に帰すべき休業に当たるので、少なくとも6割の休業手当を支払わねばなりません。
 計画停電ではいつもここは停電であると公表される地域では、解雇事例も増加することでしょう。解雇予告された労働者が、予告期間中に休業することも考えられもしょう。この場合も、使用者の責に帰すべき休業と判断されるでしょうから、少なくとも6割の休業手当を支払わなければなりません。労働者が休業しなければ、賃金全額を支払うべきなのは当然です。
 他地域の計画停電によって、その地域で生産されている原材料の入手が困難になって営業できない事態もあるでしょう。このようなお手上げ状態になったためにする休業も、使用者の責に帰すべき休業にはならないでしょう。賃金支払い義務も、休業手当支払い義務もないといえるでしょう。ただし、使用者としての責務を履行していない場合、、例えば、原材料の他地域からの入手が出来るのに、それをするのを怠ったというような場合には、話は別です。休業手当を支払って下さい。
 この問題は、きわめてタイムリーな問題なので、休業しようとする場合には、労働基準監督署に出かけて労基法26条の意味などについて説明を受けて下さい。労働者も、役所に出かけて事情をよく説明してください。
なお、労基法は、休業手当をいつ支払うべきかについて沈黙しています。労働者は、休業時には労働しないので休業手当は、賃金ではありません。賃金に代わるものでもあるので、賃金支払い日に支払ってください。