錚吾労働法

五六回 年少者の保護①年少者など
 年少者は、幼児(ゼロ才児から小学校に入学した年度の4月1日の前日までの者)、児童(小学校に入学した年度の4月1日から満15才に達した日以降の最初の3月31日が終了する日までの者)、年少者(満18才に満たない者)、未成年者(満20才に満たない者)を言う。
 労基法56条は、児童を使用してはならないとしています。使用者たる者は、これを常識として知っている筈です。産業革命時代のイギリスには、5才の児童の炭鉱労働者がいましたし、アジア・アフリカにはそれくらいの年齢の絨毯織り労働者がいるばかりでなく、戦士として戦場で戦っている例もあります。また、日本では、尋常小学校を出たばかりの少年が、商店などの住み込み丁稚として働いていたことも、ありました。
 年少者で義務教育年齢の者は、学校で学ぶべき者で働くべき者ではないし、またその労働が心身の健全な発達を阻害する可能性もあります。乱暴な中学生の教育の一環として塗装店で働くよう指導し、中学生が登校せずに、労働していた例がありましたが、よくよくの事情があったと推察はしますが、これは、してはいけないことです。塗装店での児童の就労は、健康を害する恐れがあり、行政官庁の許可(労基法56条2項)は得られない筈です。
 親の貧しさに付け込むような悪人が、いないわけではありません。児童の教育、児童福祉は、児童労働を例外的に許可する行政官庁が決して見落としてはいけない考慮事項です。風俗営業店で、女子中学生が働いていたなどという例が、時折報道されます。女子児童の深夜業従事なんかは、論外ですが、悲しくなっちゃうよ。
 健康や福祉に有害でなく、労働が軽易で、短時間ですむような仕事は、13才以上の児童であって、その者が就学時間外に就労することについて行政官庁の許可があれば、就労可能なものだと言えます。日本がまだ貧しかった時代には、就労する親孝行な児童がいましたが、長じて大成したひとも結構いたんですよ。
 児童は、教育を受ける権利(憲法26条)の主体であり、また酷使されてはならない(憲法27条3項)。この当たり前だと人々が考えていることを、きちんと守らせるために、行政官庁の許可(労基法56条2項)学校長の就学に差し支えないことの証明書と親権者または後見人の同意書(労基法57条2項)を制度化して、児童福祉法でもって監視することとしているのである。