錚吾労働法

五九回 年少者の保護③未成年者の賃金請求権
 当たり前のことですが、労働契約を親権者又は後見人の同意を得て締結して労働している未成年者は、使用者に対して賃金を請求することが出来ます。賃金を請求し、又は受領するに際しては、未成年者は、親権者または後見人の同意を得る必要はありません。労基法59条1項を読んで下さい。「未成年者は、独立して賃金を請求することができる」と書いてあります。独立してというのは、親権者または後見人に相談する必要もないということを意味します。
 賃金請求権の行使について、未成年者が独立性を有しているのですから、未成年者は、賃金の受領についても独立性を有しています。親権者又は後見人が、「ワシが代わりに受け取ったるわ、まかしとき」などと言うときは、どんな魂胆か分かったものではないな。未成年者が働いて、親が競艇にいったんじゃ、孝行話にもならないよ。使用者がそんな親に賃金支払っちゃったという場合には、権利者たる未成年者に支払わなかったのだから、未成年者は僕に賃金支払ってと請求することができるのさ。使用者は、親からもらってくれと言えないんだよ。労基法59条2項を読めば、この理屈は分かる筈さ。
 親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代わって受け取ってはいけない。使用者は、賃金を労働者に直接支払うのでなければなりません。これは、労基法24条の直接払いの原則からも頷けることでしょう。
 では、使用者が賃金を支払わない場合に、未成年者は親権者又は後見人の同意を得ないで、つまり独立して未払い賃金の支払いを裁判所に訴求することが出来るのであろうか。これは、未成年者の訴訟行為の可否または訴訟能力の存否などという言葉で論じられている問題だね。もっとくだけた言い方をすると、未成年のお兄ちゃんやお姉ちゃんは、裁判所に出かけて行って、使用者のおっちゃんがお金払ってくんないから、払うようにしてちょうだいということができるかなという問題なのさ。
 民法6条1項をよく読んでちょうだい。比ゆ的な言い方かもしれないが、労動力の営業を許可された未成年は成年とみなすという具合に類推するのが適当じゃないかな。類推てのは、ぴったりじゃないけれども、よく似ているから民法6条1項を適用してもいいんじゃないかという意味なんだよ。この種の問題は、昭和30年頃に争われたことがあった。最近は、特に問題になっていないようだな。