錚吾労働法

六〇回 年少者の保護④労働時間など
 年少者を成年者と同じように働らかせるのは、適当ではありません。成年と未成年とを何才で区分けするべきかという問題は、本当のことを言うと、重要な問題です。ひところに比べれば、未成年者の体格は立派になったと思います。18才で成年としたらどうかという論は相当以前から存在していますが、そうすることへの躊躇も広く存在します。精神面の充実も立派な体格に伴って顕著だというところが見えないので、躊躇があるのでしょう。
 ここでは、現行の労基法の規律について説明しておきましょう。変形労働時間制は、未成年労働者には適用がありません。1週間単位の変形労働時間制(労基法32条の2)、1カ月単位の変形労働時間制(労基法32条の3)、1年単位の変形労働時間制(労基法32条の4)、1日単位の変形労働時間制(労基法32条の5)は、未成年労働者には適用できませんので、注意して下さい。
 36協定による時間外労働および休日労働労基法36条)と公衆の不便を避けるために必要なものその他特殊の必要なものについて、必要避くべからざる限度でおこなわれる労働時間及び休憩の特例(労基法40条)も、未成年労働者には適用がありません。公衆の不便というのは、例えば列車の運転などの乗務を想像すれば、分かることだと思います。
 18才に満たない未成年労働者は、深夜業(午後10時から午前5時まで)に従事ささえてはいけません(労基法61条)。かっては、未成年者を深夜業に就かせて、懲役刑に処せられた使用者がいましたが、最近はそんな使用者は現れていないようです。こっそり違法なことをしている使用者は、多分いないわけではないでしょうな。交代制に言及していますが(労基法61条3項)、かっては電話交換が手動でなされていたことがありましたが、女性オペレーターが交代制で労働する典型的な職場だったのです(労基法61条4項)。要は、若干の例外はあるのですが、未成年者の労働者の労働時間、休憩、休日は、原則どおりに厳守せよ、そこから外れては駄目だといっているのです。上手に書けばなんてことないのに、ごちゃごちゃと書くのが役人の文書なんでしょうな。
 18才に満たない未成年労働者を危険有害業務に就かせてはいけません(労基法62条)。また、18才に満たない未成年労働者を坑内労働に従事させてはいけません。
 18才に満たない未成年労働者が会社都合で解雇されてから2週間以内に帰郷するとき、使用者は帰郷費用を負担しなければなりません。配偶者や子がいるときには、その者の旅費も負担しなければいけません。事実婚であっても、同様です。帰郷費用は、主として旅費ですが、両親宅に換えるのであれば、そこに到達するのに必要な金額です。荷物の運送費用も、使用者が負担すべきでしょう。