錚吾労働法

六三回 育児と介護②
 平成3年に、育介法(「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)が制定・施行され、20回の改正を経て今日にいたってます。①で述べたように、育児・介護は単なる家庭の問題を超えて、社会の、また国の重要な対応課題となっています。育介法は、「育児休業」、「介護休業」、「子の監護休暇」、「介護休暇」の制度を設け、子の養育や家族の介護を容易にするため「所定労働時間等に関し事業主が講ずべき措置」を定め、関係労働者に対する「支援措置」を講ずること等を定めているのです。
 この法律は、問題をほぼ家庭内に閉じ込めてあったことから、社会や国の領域に引っ張り出して、関係労働者に必要となる諸制度を設けるとともにだね、支援措置等も設けて、雇用の継続や再就職をば支援・促進して、労働と家庭の両立等を図ろうとしています(育介法1条)。
 育児、介護、看護は、愛情抜きには語れませんが、これらを労働として見れば、これらが産業として成り立っているくらいですから、なかなか大変なことなんだよ。だから、いったんは休業したり、退職しなくっちゃ育児、看護、介護が出来ない労働者が、多数いると思う。
しかし、退職したりすると、再就職支援を考慮しても、実際に就労するまでには苦労もある。そんなわけなので、育介法は、労働者が利用することができる制度や措置を複線的に用意して、関係する労働者に仕事と家庭を両立させることが出来る制度や措置を選択してもらうことにしているんだよ。強制的に休めなどと言っちゃあ駄目なのさ。つぎに、育介法の定める制度等について、説明することにしようかな。
1 「育児休業及び介護休業に関する制度」 これは、育休法2章及び3章に定めがあるように、労働者が育児休業と介護休業の権利を有することを明確化すると共に、休業の申し出があった場合に事業主に「承認義務」を課すことにより、これら権利が「民事上の権利」であることを宣言しています。また、事業主の努力義務についても、定めています。ここに言う努力義務は、労働者が休業し易い職場環境を整備するよう努力してちょうだいということなんだよ。育児の対象は、当然のことながら「子」ですよ。「養子」も{子」ですから、「あんたんとこは、養子だから駄目」なんてととは、言っちゃいけないよ。
 育児休業の申し出を受けた事業主は、原則として申し出を拒絶してはなりません(育休法6条)。但し、「雇用期間が引き続き1年に満たない労働者」である場合、その他「育児休業することが出来ないこととすることに合理的理由がある」場合には、「過半数代表組合又は従業員の過半数を代表する者との書面による協定」にその旨の定めをしておけば、育児休業の申し出を拒否できるのです。だから、書面協定もなくて、「あんたウチに来てからまだ10カ月だっせ。育児休業いうかてそれなんでんねん。認めまへん」なんて言っちゃあいけないんだよ。
 育児休業の申し出たこと、育児休業したことを根に持って、労働者に不利益を課すなんてのは、最低のことさ(育休法10条)。絶対にしちゃいけないことだ。使用者たる者は、そんなことをする管理職がいたら、叱りおくのでなくっちゃ本当のこととは言えないわ。
 労働者は、事業主に申し出て介護休業することができ(育休法11条)、事業主は、これを拒否できません(育休法12条)ただし、有期労働契約の労働者にあっては、引き続き1年以上の雇用期間を経過した労働者と休業開始予定日から起算して93日を超えて引き続いて雇用されることが見込まれる労働者に限って、介護休業を申し出ることができることになったいます(育休法11条1項1号2号)。
 介護休業は、要介護常態にある「配偶者(内縁関係を含む)」、「父母(養父母を含む)」、「子(養子を含む)」、その他「同居の父母、子に準ずる者(家族同然の配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫)」である。