錚吾労働法

六四回 育児と介護③
 2 子の看護休暇
 「小学校就学の始期に達するまで」の子を養育する労働者は、事業主に申し出て「1年度(4月1日から3月31日まで)」に5日、同様の子が2人以上の場合には10日を限度として、子の怪我、疾病の看護のため、疾病の予防のために休暇(「看護休暇」)を取得することが出来ます(育休法16条の2)。この年ごろの子は、動き回ったりしてややもすれば怪我をしやすく、疾病に罹患したりして、特にその父母の看護を要することになります。これは、子育てをした者であれば、誰にも経験があることでしょう。
 「小学校就学の始期に達するまで」の意味は、「子が6才に達する日の属する年度の4月1日から翌年3月31日まで」ということだから、平成23年4月1日生まれの子は、平成29年3月31日午後12時に満6歳に達することになります。従って、この場合に子が「小学校就学の始期に達するまで」の意味は、平成29年3月31日だということなんだね。
 ところで、看護休暇の「年度の開始日」については、子の就学開始日と必ずしも同日ではないので、事業者は注意して下さい。年度の開始日は、事業者が任意に定めていいんですよ。ただし、その定めは、必ず就業規則に書いておかねばいけません。書いてなければ、開始日は4月1日となるだけです。
 看護休暇の対象となる疾病には、何らの制約もありません。重病でなくてはならないなんてことは、必要じゃありません。風邪で微熱があるという程度でも、看護休暇を取得することが出来ますよ。看護休暇を取得した労働者に、事業者は賃金支払い義務を負うことはありません。これは、育児休業の場合と異なるところはありません。民法536条を読んで下さい。
 3 パパ・ママ育休プラス
 「パパ・ママ育休プラス」(育休法9条の2)は、男性労働者の育休(育児休暇)取得を促進しようという趣旨のものです。子育て=女の仕事と言っていては、共稼ぎ夫婦の場合には、女性の負担は重いものとなり、退職を余儀なくされます。人口減少時代では、女性の労働者としての存在は経済の運行にとって不可欠です。夫婦で子育てすれば、また開始日をずらしておけば、休業期間を単独でする場合に比べ職場復帰を早めることが出来るでしょう。「プラス」と言うのは、「その養育する1歳に満たない子」(育休法5条2項)を「1歳2カ月に満たない子」(育休法9条の2)という具合に読み替えることを意味しています。
 育児休業を申請したこと、育児休業をしたことを理由とする不利益取扱は、禁止されています(育休法10条)。これは、パパ・ママ育休プラスの場合であっても、同様です。解雇その他の不利益取扱は、無効です。解雇無効となるのは、休業と解雇との間に因果関係が認められるものです。総ての解雇が、禁止されているわけではありませんので、労働者も事業者も注意して。それ以外の解雇の有効・無効の司法的判断は、別途なされるべき事柄です。
 以上、育児と介護に関して述べたことは、ごくごく荒いスケッチであるに過ぎません。詳しくは、法文を精読して下さい。そうすれば、育児、介護、看護で休業や休暇を考えている労働者は、自分に関係する部分を発見できます。労働者も事業者も、労働局へ気軽に出かけて、パンフレットを入手したり、説明をしてもらいましょう。