錚吾労働法

七三回 本年3月期の勤労統計調査
 厚労省が5月2日に公表した「勤労統計調査(速報)」によると、3月の1人当たりの「給与総額」は、前年同月と比較すると、0,4%減の27万4886円、「所定内賃金」は0,9%減の24万3425円となった。景気は、回復基調にあったが、給与総額の13カ月ぶりの減少となった。
 「所定外労働時間」は、2,0%減の10,1時間となり、15カ月ぶりの減少であった。特に、「製造業の所定外労働時間」は、前年同月比較で0,8%減の13,9時間となった。震災前の2月と比較すると、6,8%減となった。これは、大幅な落ち込みと言ってよいであろう。
 「自動車産業」の「部品製造部門」が東北地方にシフトしていたため、震災の影響をもろに受けることとなった。「自動車組立部門」が、部品の調達が出来なくなって、「生産停止(休業)」に追い込まれたが、この影響が数字に明らかになって現れた。
東電の「計画停電」の実施も、大口顧客への配慮や、夏場に向けての演習という意味もあってであろうが、これによる営業時間の短縮、休業、自主的欠勤の給与面や労働時間面への効果はかなり大きかったのではないかと推測されよう。
 旅館、ホテル、スーパー、コンビニ、土産物店などの「サービス産業」の従業員は、「パート労働者」が多く、もともと最低賃金水準で働いていることが多い。実質的には、これら業種においては、生計により響く痛い効果がみとめられるであろう。
 いずれにせよ、震災後の「心理的シュリンク」及び「買い控え」と相まって、「購買力の低下」を招いている。これは、かなり深刻な経済への影響をもたらすかもしれない。「生活用品」の値下がりが予測される一方、他方では、「棒鋼」や「生コン」の価格上昇が見込まれる。「農産物」の品薄値下がりの可能性もあり、農業労働者への影響が、心配である。
 この種の統計を読むときには、注意が必要である。「毎月勤労統計調査」は、5人以上の「常用労働者」を雇用している事業所を対象として行われる調査であって、約180万事業所から抽出した約3万3千の事業所の回答を集計したものである。最も基本的な統計的数字を表わす政府の調査であり、景気動向を統計的に示す政府の「月例経済報告」や日銀の「月例経済速報」とともに注視されねばならない資料である。
 震災地域の福島などの県においては、今回の調査は実施されていない。なお、震災後のこれら地域の「失業率」は、正確な統計を待たねばならないが、きわめて高い数字となる筈である。「4人に1人は、失業した」とのニュースがあった。「雇用保険受給申請」などから割り出された数字だろうが、「大規模復旧工事」が着手されるまでは、増加傾向が続くのではないか。