錚吾労働法

九八回 節電
 「節電」は、当たり前のことです。誰でも何時でも節電していると思っていたが、そうでもないらしい。夏には、窓を開け放して、簾で日光の直射や反射を遮り、板の間に座したり、寝ころんでおれば、体に良くない冷房などはしないでよいし、耳に心地よい山鳥の囀りに時間を忘れてしまう。敷地にわき出る清水は、あらかたのものを冷やすことができるし、庭苔の空気清浄能力を何倍も強化します。菰棚は、結構な広さの屋外食堂となります。
 事業所では、そうはいかない。下手に節電すれば、精密機器を狂わせてしまうだろうし、産品の信頼性が失われるかもしれない。「チョビチョビ節電」は、だから企業に危険である。「操業時間短縮節電」ならば、メリハリがきいていて良いが、「節電」イクォール「賃金節約」の計算も成り立つので、労働者の集団的同意を得て行うのでなければならない。つまり、従業員の「過半数代表労働組合」または従業員の「過半数を代表する者」の意見を聴取する必要のある「就業規則」の改正を行わなければならない。
 「クールビズ」で冷房器機の温度を下げて節電するなどは、工場では問題外でしょう。それが可能なのは、「事務労働」でしょう。役所などが典型的ですが、生産活動しているわけではない。このような所では、「窓の開放」、「昼間の消灯」、「エレヴェーター、エスカレーターの停止」、「クールヴィズ」、「冷房装置の温度設定の変更または間歇的運転もしくは停止」などなどいくらでも打つべき手はある。これらの内、どれを実行するかについては、職場環境の変化をもたらすことであるので、「労働組合」と意見をすり合わせておきたいものである。急激な職場環境の変化は、「熱中症」や「貧血症」の発症や「脳心疾患」の増悪の原因。これらに対する迅速・果敢な対応も、必要となることがある。
 「週休3日制」は、就業規則を改正する必要があるが、やってやれないことはない。特に大学のような会議好きの事業体にあっては、「会議禁止」期間を設ければ、「週休3日制」は楽々と実現することができる。「計画年休の集中的な実施」による「夏季休業(「夏休み」)」の拡大も、一考ににあたいする。「企業の生産カレンダー」の変更は、取引先への納期などについての変更を伴わない仕方でなされることができるような工夫を要する。特に系列企業間での調整を綿密に行っておくのが、賢明である。「サマータイム」の導入も、就業規則の改正を要する。生産企業での「サマータイム」の導入は、早朝5時操業開始くらいのことをやらないと、効果がすくない。午後2時には帰宅できるのは、慣れてしまえば結構なことだと歓迎されるだろう。「全国一斉のサマータイム」が望ましいが、出来ないだろう。
 「深夜業転換」は、しようと決断すれば出来ないことはないが好ましくない。従業員を2組に分けて、「通常勤務」と「深夜勤務」とを「交代制」で編成するというプランである。従業員数に変化がなく、作業効率も同じだとすれば、「節電効果」は、深夜割増賃金を考慮しても、大きいのであろう。「生産規模の拡大」を意図する交代制導入の場合は、新規雇用者を生産現場に投入することとなるので、考慮すべき事柄は複雑である。
 [節電」ではなく「増電」しなければ困る事業所もあろう。被災地の事業所の復興は、被災地そのものの復興を担うことになるので、送電をケチってはいけない。東北の「精密機器」・「自動車関連部品メーカ」の立ち直りは、阻害要因(「東電」)を慎重に見極める必要性があるが、意外に早いのではないか。「節電」は、当たり前のことである。「節電」ばかり強調して、温度が上がる半面、景気のクールダウンが生ずることがあってはならない。企業家心理、労働者心理をも考慮して、[節電」と言ってください。