錚吾労働法

百回 ハラスメント 
 「おい、セクシャル・ハラスメントって何だ?」。ある会社の技術者だった知人が、「お前らはどういう教育をしていたんだ!」と社長から大目玉をくらって、叱られた理由が判らなかったので、電話してきた次第。もう随分昔のことです。アメリカの顧問弁護士が、「大変なことが起こりました。訴えられれば、大問題になります」ってんで、すっ飛んできて、社長に話した。それで、「お前らは・・」となった。大問題となった自動車会社のアメリカ工場での、女性従業員が「セクシャル・ハラスメント」だと言って、日本で技術研修して帰国したアメリカ人従業員をやり玉にあげたのであった。
 「ハラスメント」は、いまや誰でも知っている言葉となりました。ドイツ語だと、「べレスティグンク」で何かしら大変だという語感になります。「相手の精神的負担になるような行いを敢えてする」のが、「べレースティグンク」だからです。「ハラスメント」は「嫌がらせをすること」という意味なので、日本語に翻訳してしまうと、軽い語感となってしまいます。「そんな程度のことで何を大騒ぎするんだ」とか、「センシティヴな者だと他の者にとっては何でもないことであっても堪えられないのだ」というようなことが安易に言われて来た理由は、この語感の軽さにも原因があったのではないかと思います。
 「男女間のハラスメント(「セクハラ」)」、「職場のラインでのハラスメント(「パワハラ」)」、「教師学生間のハラスメント(「アカハラ」)」などが、「ハラスメント」の種類として、言われています。「女をいやらしい目でみてはならん。悔い改めよ、大馬鹿物どもめが」と紀元前から説教されてきたのに、男どもは悔い改めることが出来ない。ミッション系Aのあの事件の教訓は、組織内勢力争いが嵩じた追い落としの画策として「セクハラ」が仕組まれることもあるということである。恋愛のなれの果ての腹いせセクハラもある。だから、ミョウチクリンなものを見抜かねばならないが、「セクハラ」は、セクハラした者への「不法行為責任の追及」のみならず、セクハラのない職場環境を整える使用者の「配慮義務違反」を追及する原因となるし、場合によっては暴行傷害などの「刑事責任」追及の原因ともなる。また、それによる「労災事案」が生ずる事も、無きにしも非ずである。
 「職場における上司のイジメ」の場合で、労働者を自殺にまで追い込むような酷いものもある。「ハラスメント」は、すべて「人間の人格」を否定する悪事である。それは、「人間の尊厳」を侵害するものである。労働者を自殺に追い込むような執拗な「パワハラ」を黙認した会社もその他の労働者も、その「不作為」が自殺の原因の1つだということに、思いをいたさねばならない。会社は、そのような者を上司の地位につけるという人選上の過失を犯したのである。また、会社が酷いイジメを現認していたのに放置していたのならば、会社もイジメをしたのだと言われても文句はいえまい。会社が不法行為責任または契約責任を問われれば、敗訴のほかはない。
 指導と称して学生を自己の利益のためにこき使ったり、付き合ったくらなければ単位をやらないと言ったりするのは、ハッキリ言って、まともな教員ではない。学生が教員の魅力なり、人格なりに心酔するような教員でもないのに、そんなことをしたりしては駄目である。K先生は立派で、尊敬していたので、頼まれたのではないが、何の苦もなくお手伝いしました。引っ越しのときなどは、当たり前だと思って、荷づくりなどしましたよ。師弟関係とはそうしたもので、指導を口実に「セクハラ」や「アカハラ」をするようでは、いけません。身に覚えのある人は、懲戒処分されたり、損害賠償訴訟を起こされる前に、日々反省しなさい。