錚吾労働法

一〇七回 解雇③解雇の自由
 教科書をめくると、「解雇の自由」なる表現が出てくる。これは、使用者はその使用する労働者を自由に解雇するすることができる、つまり使用者は労働者との間に締結した「労働契約」を自由に解除することができることをいっている。民法627条によれば、「期間の定めのない労働契約」をその労働者との間で締結している使用者は、何時でもそれを解約してもよい。「解雇の自由」というのは、この規定のことをいっている。
 使用者が自分の好き勝手に労働者を解雇していれば、そんな使用者は、結局は、市場から消えさる運命にあります。現代は、「解雇の自由」ではなく「解雇の不自由」を語る時代だということを忘れてはいけない。解雇をめぐる裁判所における訴訟や地位保全賃金仮払の手続では、使用者の敗訴率は高いと考えてください。
 今は労働契約法16条に定めがありますが、同じ定めが労基法18条の3に挿入されたときは、本当にビックリしました。「・・無効とする。」との規定は、労働監督官には理解できないであろうし、立法技術としては、殆ど最低だったからです。法律行為の有効・無効を判断する資格を有するのは裁判所の裁判官であって、労働基準監督官ではありません。個別紛争処理の機関としての労働局のことを考えてそうしたのかもしれなかったが、労働契約法16条の定めは、大ぶりな判例レステイトメントだということは多少の労働法の知識のある者ならば、誰でも知っていることです。だから、その任に当たる者にその程度の知識が無かったとは思いません。
 ここで確認しておきたいのは、解雇は有効とされるときもあり、無効とされるときもあるということです。「解雇は何が何でも無効」と強弁する者もいますし、「その解雇は有効じゃないかな」などと言って酷い目にあってしまった者もいます。紛争の渦中では、こういうことは、珍しくありません。最近は、労働者を解雇から守るための法律が随分ふえました。
 労基法、労組法の「古典的な解雇制限禁止規定」は、誰の頭にも入っていることでしょうが、これらの法律以外にも、「解雇制限禁止規定」が多々あります。これらの法律の関係規定をざっと見ておきましょう。必ず自分で読んでください。読まなきゃ駄目です。
 労基法19条、20条
 労組法7条1号、7条4号
 個別労働紛争解決促進法3条3項
 雇用機会均等法17条2項
 育児・介護休業法10条、16条、16条の4,
 16条の7、18条の2,20条の2、23条の
 2,52条の4
 短時間労働者雇用管理法21条2項
 公益通報者保護法3条、4条
 解雇その他の不利益をしてはいけないとする趣旨は、解雇などの不安を除去することによって、労働者が自分の権利を行使し易くすることにあります。だから、当たり前のことを定めており、特別なことを定めているわけではありません。