錚吾労働法

一一五回 上司への暴言を理由とする解雇
 最近ですが、「長幼の序」をわきまえない奴だと言って知事を叱った大臣がおりました。礼儀作法と言えば、礼儀作法に極めてうるさい家庭に育ったのでそれに反発して、態と無礼な振る舞いなどをしていた若い頃を思い出して汗顔の至りです。別にドラゴン氏の肩をもつ気はありませんが、ため口きかれてムッとすることがよくありますから、礼儀作法が失われつつあるのを嘆かわしく思うのは、ドラゴン氏ばかりではないでしょう。会社で、上司に暴言をはくなどの行為は、やり方としては下手なんでしょう。
 上司をテンから小馬鹿にし、指示を聞かず、業務命令を無視したり、挙句の果てに暴言を吐くなんてのは、感心する話じゃござんせん。無言の暴言というのもあるでしょう。もろ肌ぬいでクリカラモンモンなんてのは、「うるせえこの野郎、ただで済むと思うな」と言うのと同じでしょ。こんなのは、解雇されてって誰も同情しない、社会的に相当な解雇ということになるでしょう。勤務時間中に「ちょっとパチンコに行ってくらあ」と言ったのが騒動の序で、もろ肌ぬいじゃった。いろんな人に親切に叱ってもらって、今は小さい態度になって真面目にやっています。
さて、新入社員で上司の指示を聞かず、上司批判を繰り返して、職場の雰囲気を気まずいものにした者の解雇は、有効とされている。
 一口に暴言と言っても、嫌がらせ、恐喝、強要、暴行をともなう酷いものもある。有効とせざるをえねい(電電淡路支部事件・大阪地判平8.7.31)。
 在外公館の職員が、別の職員の経歴詐称、不正行為を事実でないのに口外し、その職員を解雇しない総領事など幹部を誹謗中傷したことので、解雇した例がある。有効とされた(ベルリン日本総領事館事件・東京地判平2.4.23)。
 学長に「お前の妻と娘を暴行してやるぞ」と暴言した大学教員の解雇は、有効とせざるをえない。刑法の脅迫罪が成立すると解される事例である。
 一見すると許容しがたいような暴言であっても、上司らの対応が原因であったとされ、解雇が無効となった例がある(大東文化学園事件・東京地判昭61.10.13)。