錚吾労働法

一一六回 資格喪失を理由とする解雇
 この世の中には、様々な職業がある。会社に就職しようとするときに、資格証書の提出を求められることがある。医師として労働しようとする者が医師免許状を持っていなければ、話にならない。会社の法務部で法曹資格を有する者を採用するというときに、志願者は、法曹資格をもっていなければならない。調理師免許のない者は、調理師の手伝い労働をすることが出来ても、調理場を仕切ることはできない。建築学科を卒業して建築士の資格を持っていない者は、ごく稀である。しかし、建築士の資格がないと建築の仕事が出来ないわけではない。他人の財産を管理する業務でありながら、銀行員資格というものは存在しない。教員資格のない者は、かっては教師になることができなかった。他方、大学の教員には免許は存在しない。
 一般論だが、免許制度は必要だが、過度な免許主義は公権力による職業への介入や行政需要を敢えて増加させることにもなるから、上手くさじ加減しなくてはならないであろう。行政改革の時代であるから、見直しが必要であろう。
 教員の臨時免許状を取得できなかったことを理由とする解雇が、無効となった例がある(玉木女子学園事件・長崎地判昭579.5.25)。これは、在籍高が臨時免許状の再出願のための書類の作成に応じなかったという事情を重視したからである。
 航空会社の乗務員の航空身体検査の不受験、虚偽の理由による登場拒否、地上訓練の懈怠による乗務員資格の喪失と喪失を理由とする解雇は、有効であるとされた(日本航空事件・東京地判昭61.2.26)。