錚吾労働法

一一九回 同僚への「誹謗・中傷・脅迫・恐喝」などを理由とする解雇
 職場にいる労働者は全員紳士というわけではない。上司に対して「くりからもんもん」したとんでもない労働者については述べた。同僚の中にもそんな人物は、いるかも知れない。「くりからもんもん」って何ですかだって?「倶梨迦羅紋紋」てのはだね、背中に「倶梨伽羅龍王」の刺青(いれずみ)してるから、それを見た人は怖がってしまうんだな。二頭の龍が絡み合いうねって天に昇っていく様を彫った見事なものだから、怖がらないで誉めてやればいいんだよ。だが、決して真似するんじゃないぞ。「身体髪膚これ父母にうく、敢えてこれを毀傷せざるは孝なり」というのを知ってるかな。
 「誹謗」は、人の「悪口」をいったり、人を「けなし」たりすることです。
 「中傷」というのは、事実でないことを言って、人の名誉を傷つけることだ。
 だから、「誹謗中傷」てなことになると、とんでもないことを言いふらしていることだよ。
 「脅迫」は、人を「脅し」たり、人に「危害を加えることを告げる」ことです。
 「恐喝」は、人を「脅し」て「財物をゆすり取る」ことです。「ゆすりたかり」ともなると、「脅し」て「しゃぶりつくす」ことになりかねないから、黙っていては駄目だ。名古屋の「母子家庭」をゆすって、ピンクサロンなどで豪遊してたトンでもない中学生がいた。新聞で連日報道されたから、覚えている人もいるだろう。
 いずれにしても、こんなことをするようじゃあ紳士・淑女とはいえない。教育機関にも、誹謗中傷で勢力を張る曲学阿世な輩がいる。困ったことだが、事実だ。大学そのものの品位が無くなるし、知的水準を下げっぱなしにしてしまうな。ルーマン、ハバマス、ポパーは、日本の大学じゃ生まれない。
 会社の中にだって、「誹謗・中傷・脅迫・恐喝」を行う労働者がいることがあるってことさ。こういうことをやりだすと、止まらなくなってしまうようだよ。こんなことを同僚にしていれば、誰も相手にしたくなくなる。そうすると、益々酷いことをやりだす。こんな人とは一緒に働きたくないと言って会社を辞めたり、上司に何とかしてくれと訴えたりすると、その上司も脅されるという具合にエスカレートするからです。しかし、こんな風にしたのは会社に原因があるからで、自分は悪くないと言う労働者もいます。
 「妻が会社で苛められ、転倒させられたショックで流産してしまった。会社に何とかしてくれと訴えたが、何にもしてくれなかったから、同僚や上司にいろいろ言った。自分は悪いことをしたとは思わない」と言う労働者がいた。
その労働者の妻が、夫に流産の原因を告げたのだった。夫は、会社にそれを告げたが、会社は何の対応もしなかったというので、上司と同僚を抗議の域を超えて誹謗した。特に、台車をぶつけた女性同僚には、強く、繰り返し誹謗したという。この例は、会社が直接相談に来た例です。「本当ならば大変なことで、会社も謝らねばならない。すぐに調査し、事の真偽を明らかにしなさい」と言っておきました。その後、何の連絡もないので、どうなったかは分からない。判例は、多くありますが、このような例はなかったと思います。誹謗するのは、良い行いではない。しかし、事案の中身をよく検討しなくてはなりません。ゆすり・たかり行為は、行為者を会社から追放して対処すべきものです。常識豊かな思考で、有効・無効を考えてみましょう。