錚吾労働法

一四〇回 有期労働契約を規制すべきか②
 有期労働契約は、様々な必要に応ずるために使用者と労働者との間で締結されてきたものである。有期労働契約の規制といっても、有期労働契約を禁止するなどは不可能である。近時悪評の的となっている派遣契約の禁止だって、出来る相談じゃあないでしょう。有期労働契約は、様々な必要から行われているものです。役所というものは、ときとして始末におえないことがあります。役所によって目の付けどころが違うからてんでんばらばらに発言されたんじゃあ、まともに付き合おうなんて気持ちにならねえや。
 幼稚園や小学校などは10mSV以下ならいいじゃないかなんてことは、文部省時代なら舌が裂けても言わなかっただろうに、文部科学省だと言っちゃうんだろうな。その文部科学省だって、最近の新卒者はだらしないから、その雇用は最初は有期労働契約によればよいなんてことは、言うわけないよな。有期労働契約の規制うんうんも、労働省時代と厚生労働省時代とでは違うんじゃないか。労働省時代は有期労働契約の繰り返し更新後の労働関係の法的構成ということが主な関心だっただろうが、厚生労働省の関心は安定的な社会保険、特に厚生年金の財源確保ということが主な関心事ということなんだろうな。財務省からみれば、有期パート労働者への課税という観点からこの問題を見るだろうな。役所によって、有期労働契約への関心はちがうのさ。
 有期労働契約をどうすべきかという問題は、本来は契約自由と労使自治の原則に従って、経済界当事者たる使用者側と労働者側との真摯な対話によって解決すべき問題である。使用者だ会社だと言っても、トヨタもあれば二間間口の八百屋もあるんだ。ということは、使用者だ会社だと言っても、どんな規模の会社を想定するのかハッキリさせなくっちゃまずいだろう。トヨタの海外工場にも有期労働契約規制を及ぼそうというのかどうか、規制の領域もハッキリさせなきゃならんだろう。三毛作可能な地域で、季節工を農民から確保しようなんてことは考えたって無駄でしょう。大みそか月と正月は、新旧で稼ぎ時だから、縁日専門の移動たこ焼き屋の大将が張りきってこの間に雇うアルバイト学生の有期労働契約も視野に入っているのかい。御師のなれの果ての神社のお札売りの大将とアルバイトの女子高校生との有期労働契約は、どうだい。言いだしたらきりが無いな。資本金額と従業員数とで限定するのかい。業種で限定するのかい。
 厚生労働省は、次期通常国会で有期労働契約に関する法案を提出する腹でいるようだから、実はこの問題は経済界当事者が意見をたたかわせている最中の見切り発車となってしまう可能性大である。そうなると、入口だ出口だという話になってしまうんだろう。