錚吾労働法

一四八回 労働者派遣問題⑤
 労働者派遣業界はいろいろと問題が多いってことが、これまでの説明で理解できたかな。さて、今回は、一般労働者派遣事業(一般派遣業)について見てみようか。、一般派遣業は、特定派遣業以外の労働者派遣事業のことです。派遣は使用者が雇用する労働者の派遣であるから、一般派遣業は、労働者派遣の依頼があるときに、必要人員を雇用して派遣することになるんだよ。労働者を雇用する必要性がいつ発生するか分からないので、その時には雇用するという意味合いを持たせて労働者に住所、氏名、派遣希望職種を派遣業者に登録しておくことになります。登録派遣なんて言い方もあるんだぜ。この種の派遣業は、小規模なものが殆どで、経済力も脆弱だから、派遣先から派遣料を値切られることが多い。使用者との関係も常時雇用されていないから、希薄なんだよな。
 派遣労働者ライトバンで作業現場に連れていく運転手が、同時に派遣会社の社長であることも、管理職であることも、決して珍しいことではありません。怪我でもすれば、平気で「お前はもう来なくていい」などと言う、悪質な業者もあるでしょう。登録労働者を必要なときに雇用するのだから、手配師とは違うと言っても、大した違いはありません。勿論、非難されないように、労基法を勉強したり、労災保険法を勉強したり、社労士や弁護士から助言を得たりしている真面目な業者もいます。他方、労働者のほうも、多分少数だとは思うけれども、派遣慣れして(雇用されている意識が希薄である)、注意力が散漫になったり(労災自己の原因となる)、派遣先の指揮命令を軽く見たりする(派遣先から派遣拒否されることになる)ようになってしまうことがあるんだね。「それでも上手く渡れば気楽でいいよな」なんて言うなよ。
 特定および一般の労働者派遣事業を一般製造業に対して解禁したんだが、これによってだね、特に大企業はリストラと雇用調整をしやすくなったんだ。リーマン・ショックにより、それは以前から危惧されてはいたがね、現実になって、民主党自民党も泡食って青くなっていた。今じゃ平気な顔してるけどね。こんな風になって困ってるのは、ブーメラン効果とでも言いましょうか、労働者の技術力の平均値が下がってしまった。それに、これから先しばらくの間は、気概のある勉強を惜しまない若い労働者を確保することが難しい。労働と教育の両分野で大失敗をした国が日本なのさ。サステイナブル・ディベロップメントなんて、軽々しく言ってもらっちゃ困るんだよ。わたしゃ、とっくに諦めているさ。豊後、備前尾張、美濃、奥州あたりから強力かつ個性的なリーダーが出現してくれんかな。首都圏のデレッとしたのは、もういいわ。