錚吾労働法

一五六回 TPPと労働問題②
 交渉参加へ向けて協議するという首相説明は、山田議員のように交渉に参加するんじゃないから安心したというように理解する人もいます。交渉に参加するためには、遅れて行くわけだから入ってもいいですかと聞かなくちゃならないし、言われた諸国は交渉参加を認めるかどうかを決定しなくてはならない。これが手続というものだから、国内の賛否両論に配慮した苦渋の表現なんてマスコミの報道を見たり、聞いたりしてると嫌になっちゃうよ。これから数時間後にAPEC閣僚会議が始まって、日本はそこでTPP交渉参加を宣言することになる。TPP交渉については日本は交渉当事国じゃないから、何が交渉されるかについても知らされていないんだよ。ギリギリだと言ったんだが、交渉参加出来ずに交渉が進展してしまって、いいよと言われたときにはもうあらかたのことが決着していたなんてことにならなきゃいいんだが。
 TPP交渉参加国と日本との間でFTAが発効している諸国は、シンガポール、チリ、ブルネイベトナム、マレーシアの五カ国で、署名したが未発効なのがペルーで、交渉中なのがオーストラリアで、ニュージランド、アメリカとは交渉もしてないんだよ。ASEAN東南アジア諸国連合)の加盟国は、インドネシアカンボジアシンガポール、タイ、ブルネイ、マレーシア、ミャンマーベトナムラオス、フィリピンの10カ国です。そして、オブザーバーが、パプアニューギニア。日本、韓国、中国は、プラス3なんて言われているな。この地域への中国の経済的政治的プレゼンスは、強化されている。これは、よく知られているはなしだよ。
 日本の交渉参加を協議するのは、現在の交渉国、つまり、アメリカ、オーストラリア、シンガポール、ペルー、ニュージランド、ベトナムブルネイ、マレーシア、チリと日本だよ。だから、日本は、まだ本交渉に参加出来ないから、オブザーバー扱いになるんであって、大活躍という訳にはいかないな。TPPは二国間のFTAの限界を打破して多国間経済圏を想像するとい構想は、資源なきシンガポールが特に世界の金融センターたらんとしたことに発している。日本の農林中金郵貯銀行の資金は、シンガポールにとっても、アメリカにとっても魅力ある対象だが、対米資本投資や金融機関の買収、対外金融サービスの強化へと姿勢転換すれば、恐るべき存在となるだろう。身構えてばかりいても、いけないんじゃないか。ただ、アメリカにとっては牛肉、自動車市場、郵貯銀行は譲れない領域だから、TPP交渉参加前の日米協議の最大争点になる。
 アメリカ政府は、日本のTPP交渉参加を歓迎してはくれるだろうな。何で奥歯に物が挟まっているようなことを言うかというとだね、自動車産業、金融業界、畜産業界などは、日米事前協議が上手くいかなければ、いまでもいい顔していないから、日本のTPP交渉への参加を許してはならんという強力な圧力となるに違いないよ。
 APECアジア太平洋経済協力)は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、中国、中国香港、チャイニーズタイペイインドネシア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、ニュージランド、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、タイ、アメリカ、ベトナムの21カ国がメンバーだ。ここでの中国と言うべきか、漢民族経済圏とでも言ったらよいのか、そのプレゼンスは突出してるだろ。APECでの日米協力は、女性の地位の向上なんだよ。
 さて調べてもらいたいことがある。ここに登場した各国の人口、広さ(面積)、国内総生産、平均賃金(労基法で言う平均賃金じゃない)、主要産業などだ。調べると、それぞれの国の内容や比較対象することができるようになって、立体的に見えるようになります。