錚吾労働法

一六三回 INAXメンテナンス事件について①
 常滑駅の西に広々と広がる工場群があります。INAX本社と常滑工場だよ。伊奈さんと従業員の努力により、住宅機器メーカーのトップ企業となって久しいね。浄水フィルターやトイレ用品など、知らず知らずにINAX商品を家庭でも使用してるようだな。INAXの企業群のなかに、INAXメンテナンスと言う会社があってね、本社は親会社と同じ常滑市にあるんだけどな、INAXの子会社なわけ。この子会社は、親会社INAXの製品を修理・保全する仕事をしているんだが、盛大に事業を展開している優良企業なんだ。この会社の大阪支店を舞台にして、INAXメンテナンス事件が発生してだね、大阪地労委から始まって最高裁判決にまで至ったんだよ。この団交拒否の不当労働行為事件事件の概要は、次のようだよ。
 INAXメンテナンスは、CE(カスタマーエンジニア)に修理の仕事をしてもらっていた。CEは、INAXメンテナンスとの間で労働契約を締結している従業員ではなく、独立の個人事業主とされ、INAXメンテナンスと業務委託契約を締結しているんだよ。だから、INAXメンテナンスから仕事を割り振られて自己の仕事をしているというわけなんだ。このCEの皆さん方がだね、建交労(全日本建設交運一般労働組合)の建設一般合同支部に加入した。加入したCE50名でもって、INAXメンテナンス近畿分会が組織されたんだね。その上部団体の大阪府本部と支部とが、INAXメンテナンスに団体交渉を申し入れたのさ。CEの皆さん方の仕事は、業務委託契約により予め登録されたCEの稼働可能日にINAXメンテナンスに顧客から入ってくる依頼を割り振られて行う仕事であったようだね。
 建交労は、会社に平成16年9月6日にCE50名の組合加入・分会結成を通知するとともに、次の項目等について団体交渉に応ずるよう求めた。組合の団交の申し入れは、同月17日、同月28日、同年11月17日にもなされた。                            ①会社は不当労働行為を行わないこと、
 ②会社は、組合員の労働条件の変更については、組合と事前協議し、合意の上実施すること、
 ③会社は、組合員との契約内容の変更や契約解除については、組合と協議し合意の上実施すること、
 ④会社は、組合員の手当、割増賃金、出張費などを支払うこと、
 ⑤会社は、組合員の年収を補償すること(最低補償550万円)、
 ⑥会社は、CE協力会の規定などを公開すること、
 ⑦会社は、その貸与する機材の損傷等に関し、負担すること、
 ⑧会社は、CE全員を労災保険に加入させること。
 なお、「CE協力会」とは、全国のCEが加入するものとして平成8年に発足したもので、CEの傷病に対する休業補償などを行うものである。その事務局は会社にあり、その事務会社が代行しているようだ。 
 会社は、組合からの団交要求をいずれも拒否した。会社が組合が求める団交に応じない理由は、CEらは会社の労働者ではないので団交に応ずる義務はない旨の回答を電話又は文書でおこなったようなんだ。これに対して、組合は会社が労組法7条2号の団交拒否の不当労働行為をしたとして、平成17年1月に大阪府労委に対して救済を申し立てたのさ。大阪府労委は、会社は組合が申し入れた団交に応じなければならないとの救済命令を会社に発したんだよ。会社は、中労委に対して再審査を申し立てたんだがね、中労委も会社に団交しなさいよと言ったのさ。