錚吾労働法

一八九回 労働時間と時間外労働⑧
 休日は、労働から解放される日である。毎週一回休日の原則は、4周間を通じて4日以上の休日がある場合には適用がない(労基法35条①②)。休日は、暦日による。暦日とは、「午前零時から午後12時までの24時間」である。休日は、就業規則で休日と定めた休日であるから、何曜日であっても差し支えない。交代制労働の場合には、特に「8時間3交代で24時間連続操業制」の場合には、8時間2交代16時間連操制の場合に比較して、暦日の1日の休日の確保ができないことになる。3番方で午後10時から午前6時まで労働する者は、暦日による休日を与えられることができない。8時間3交代24時間連続操業制は、好ましい就労形態ではない。しかし、就業規則にその旨の定めがある場合には、例えば「午前6時から午前6時までの連続24時間の休息」が暦日による休日の代替となることができると解する。休日が暦日によるものである以上は、この場合の24時間は休日ではなく、休日の代替であるが、休日の代替でもってよしとするのである。
 休日は、毎週1回の原則に従う。従って、1週目は月曜日、2週目は火曜日というような休日の設定も出来ないわけではない。しかし、このような休日の設定は、対内的・対外的に不興を買うことになるかもしれない。多数の不特定の顧客への特定の場屋での販売を業とする事業場の休日は、木曜日であることが多い。しかし、最近は、365日営業(年中無休)の事業場が増加しつつあるから、毎週1回休業=毎週1回休日は、成り立たなくなっている。この場合には、個々の労働者について休日カレンダーを策定して、毎週1回の休日を確保するか、4週を通じて4日以上の休日を付与することとなる。使用者は、労働者に一斉に休日を付与しなくてもよい。
 毎週1回と言うが、週の始まりはいつのことか。週の始まりは何曜日かという問題である。労基法その他の法令に週の初日は何曜日との定めは、存在しない。わが国で、われているカレンダーの週の開始日が日曜日となっているのは、グレゴリオ暦を採用しているからである。しかし、州の開始日を日曜日だと認識している労働者や使用者は、どれくらい存在しているのか。大部分の者は、月曜日が週の初日だと認識しているようである。では、木曜日を休日としている事業場の週の初日は金曜日であると認識されているのであろうか。日本人にとっては、週の出勤初日が週の初日のようである。休日を神との対話の日で、宗教施設に行って、僧の説教を拝聴し、宗教歌を歌い、祈って反省する日だという宗教的・文化的に重要な日だと認識しているところでは、土曜日または日曜日が週の初日である。シャ―リア法では、どうなっていますか?
 わが国の殆どすべての事業場は、4月1日を年度初めとしている。今年の4月1日は、日曜日である。労働カレンダーの意味における週の初日は、4月2日である。6日労働1休日で、6労働の後の1日休日ならば、8日が休日となる。厳密な1日8時間労働ならば、土・日が休日となる29日の昭和の日(日曜日)の翌日の振り替え休日(月曜日30日)は、労基法上の休日ではない。しかし、事実として3連続休日となる事業場もあるだろう。第1週を起算点とすれば、第1週から第4周の間の休日は7日で、第2週を起算点とすれば、第2週から第5週の間の休日は7日ないし8日である(ただし、当然のことだが、どの4周でも4日以上などと考えては行けない)。従って、毎週一回休日の原則は、殆どの大企業では妥当性を失っている。他方、小企業では、休日が無いではないが、週一回休日の原則に違反するような所もまだある。35条1項は、意味のない規定ではない。
 週1日ならば、誰でも理解できるだろう。4周間を通じて4日以上は、あくまでも週の開始日を起算点とする4週間を通じて4日以上の意味である。どの週を起算点としても、4週間を通じて4日以上という意味ではない。労基法の表現の稚拙の故に、かかる誤解が生じて、煩瑣なことになるのである。労働者も使用者も、よく分からないままに放置してはいけない問題である。毎年4月1日を年度初めとする労使慣行が行き渡っているわが国の労働関係では、同日を4週間の起算点とし、4週間ごとに休日日数を計算することになる。労働開始日が4月1日でない中途採用や年中募集採用の場合には、最初の就労日の曜日について調整しておくのが望ましいであろう。
 休日を振り替えてしまえば、本来は休日であった日の労働は、休日労働にはならない。「休日の振り替え」は、休日を休日でない曜日に移動させることである。振り替え日を、事前に国定しておかねばならない。振り替えと代休は、異なる。代休は、使用者が労働者に休日労働をさせた場合に、休日の振り替えを行わずに休暇を与える(休日を与えるのではない)というものである。使用者は、代休を与えても与えなくてもよい。