錚吾労働法

一九三回 労働時間と時間外労働⑫
 (12)宿日直と監視断続労働
 宿日直と監視断続労働は、コンセプトとしては異なるものである。宿日直は、労働者の本来の業務に付随的にかつ当番制で行われるものである場合もあれば、宿日直のみが本来の業務から解放されて行われる場合もある。そのいずれにおいても、日直が半日直の形態で行われる場合がある。宿直は、宿直者が強盗の被害者となる場合が少なからずあったこと、警備業の発展にともなって、廃止する事業場が増加した。日直は、日番制で1日8時間の時間内で行われている場合もあれば、午前のみまたは午後のみ行われる半日直の場合もあり、週番制で1週40時間の時間内で行われている場合もある。使用者は、「宿日直勤務で断続的なもの」については、所轄労働基準監督署長の許可をえて、これに従事する労働者を労基法32条の定めに関わらず使用することが出来る(規則23条)。この労基法32条の適用除外は、宿日直勤務で断続的なものについてのみなされるものである。
 「断続的なもの」というのは、「連続的ではないもの」という意味である。労働が、業務の性質によって、「間歇的に行われる場合」である。「宿日直勤務で断続的なもの」というのは、「宿日直のみの勤務で断続的なもの」であって、「労働者の本来の連続的な業務に付随的に行われるもの」ではない。1週40時間1日8時間の本来業務をほとんど非断続的に行っている労働者が付随的に宿日直勤務する場合に、使用者が労働者を労基法32条に関わらず使用できるはずはない。
 他方、監視断続労働は、労働者が労働契約によって義務付けられている本来的な労働そのものが監視的労働、断続的労働の場合をいうのであり、非本来的な労働たる宿日直の断続的なものとは明確に区別されなければならない。監視が労働者の本来業務で、精神的な緊張を伴うものは、決して少なくない。原子力発電所など発電施設における計器監視業務、石油精製プラントの器機監視業務、宇宙航空管制の監視業務、医療機器監視業務など、労働者の監視業務は多方面において行われている。これらの監視労働は、断続労働とは言い難い。緊張度が低い労働などとと言うべきではない。
 断続的労働は、業務の遂行と次の業務の遂行との間に手待ち時間があって、その間の緊張度がほとんどないか、あるにしても軽度であるような労働をいう。業務が断続的であっても、業務そのものが高度の緊張をようし、かつ危険である場合には、手待ち時間の観念を容れる余地は無い。業務の危険度を考えたら、使用者は、逆の意味において、労基法32条によらずに労働者を使用しなければならないことがある。これは、原発現場で実際に起こっていることである。東電等の企業と労働基準監督署原発労働者の労働実態を正確無比に把握しているかどうか。これは、正確無比にやってくれなきゃダメである。
 24時間連続勤務のうち、せいぜい3時間ないし4時間の監視業務しかなくて、それ以外の時間が手待ち時間なので、資料を持ちこんで幾らでも勉強が出来るという人物がいました。法制史の大学者になった。仲間だから感慨深い。こういうのを典型的な監視断続労働という(労基法41条3号)。要は、労働基準監督署が労働実態をよく観察して許可すべきかどうかを判断すべきである。