錚吾労働法

五一回 原発労働者
 福島原発事故がコントロール可能なものなのかどうか、素人のわれらは専門家に意見に首を傾げて聞いているしかありません。そして、懸命に現地で働いている皆さん(東電関係者、消防関係者、自衛隊関係者、そして多分その他の関係者)には、感謝の気持ちでいっぱいです。御苦労さまに存じます。2000円にも満たないような危険手当で、原子炉に向かって格闘して下さっていることを思うと、準備不足のまま走ってきた原発行政の姿に怒りを感じますよね。安全神話の上に胡坐をかいて、消防車、救急車、特殊車両などの機器すら備えないでいた、行政と企業の共犯的姿勢、裁判所のノー天気には、怒り爆発だよ。
 ところで、危険な原発で炉心の清掃などに従事する労働者に、いくら支払っているのでしょうか。非常に危険な業務であり、高額な日当を支払っていたのです。1日のごく短時間しかしてはいけない労働ですが、7万円程度だったと思います。だったと過去形で書いていますが、これには訳があります。電力会社の社員は、危険満杯の作業はしないに決まってなす。ましてや、国の安全院の役人がするわけないでしょ。
 問題は、日当7万円に群がっている者たちだ。群がって毟り取って労働者に渡るのは、せいぜい1万円ってとこかな。こういうのを、中間搾取って言うんだね。被曝線量が許容範囲を超えればそれ以上は働けないから、結局は、貧乏暮らしになっちゃうんだ。労基法6条は、「何人も。法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」としているでしょ。これは、中間搾取を排除する国の堅い決意を表明した定め、118条1項は違反者を厳しく処罰するとしています。
 ところが、7万円というのは、電力会社が直接に労働者に支払う金額ではなく、請負会社に支払う請負代金の計算根拠としての日当金額なんだ。危険な業務は自分はしたくないから、仕事は次々に丸投げされて、最後の請負業者が労働者を送り込むって寸法さ。ドイツ語でガンツウンテンという言葉がある。どん底とか最下層っていう意味です。炉心に出入りしての労働は、どん底労働かもしれない。このようなやり方は、労基法6条違反にはならないのでしょうか。これ宿題です。考えてみて下さい。