錚吾労働法

六八回 原子炉事故と労働③
 新聞などマスコミ各社が報道している原子炉及びその近辺での労働は、原子炉のこれ以上の暴走を鎮静化させようとする「英雄的労働」であって、まことに過酷な、未経験な労働です。自分の命を的にして戦う労働です。これらの労働に従事する人々は、官民、中央地方、東電関連非関連を問わず、労働が終わった後々までも、健康管理が行われ、観察されなければなりません。年金についても、特別貢献枠を設けて、老後の生活に不安の無いようにしなければなりません。政府は、これらを早期に纏め上げて法的手だてを講じなければなりません。
 当たり前のことですが、単なる日当で済ませてしまおうなどという魂胆でいてはなりません。東電の軽重は、単に事故を発生させたという点ばかりでなく、この点でも問われるのです。派遣、日雇いの労働者は、最早東電にとって経験豊富な労働者となっています。この際、正社員化宣言を発しなさい。労働法を自分たちで作りなさい。東電には、現場親方的な取締役がいない。いざとなれば、ひ弱さばかりが目立ってしまう。作業服と背広の意思疎通は、十分でなかった。この点は、早急に改善されねばならない。 
 この期に及んで、教科書や判例を頼りにしているようでは駄目である。特に原子炉やそこでの労働について知っている裁判官(「安全だと言った裁判官」は深く恥じなければならない)や労働法学者なんぞは、どこを探してもおりませんよ。こういう特別な作業環境での労働の専門家は、東電、東電の関連各社、原子炉労働者達であるに違いない。これらが、誤りない想定域範囲の広い労働の在り方を、緊急時の対応をも考慮して作り上げなければなりません。厚労省の被曝線量アップの措置は、厚労省の想定域の狭さを万天下の曝す結果となりました。そうせざるを得ないとはいえ、国の機関として恥ずかしいことです。
 大変だからといって、騙して働かせたり、嫌がってる者を働かせたりしては、いけない。勿論そんなことはあり得ないことであるが、疑っている者もいる。東電の帳簿上の日当単価が幾らかは知らないが、数次派遣の禁止を早急にすべきである。派遣業などという本来は中間搾取に当たるような業界を法認した国会責任は、追及されてしかるべきだ。自民党民主党も、この点では、同罪であろう。誰が[人入れ屋」を現代にタイムスリップさせたのか。これは、経済と労働法の下落の始まりであって、企業を興隆させるものではない。この事故を機に、派遣法制の是非について議論が活性化すればよいのだが。