錚吾労働法

一一一回 勤務不良を理由とする解雇
 勤務不良というのは、遅刻・早退が多いとか、欠勤が多いとか、勤務意欲に問題があるとか、顧客の不興をかうなどのことを言う。このような事実は、信頼を基調とする継続的な労働契約関係の解消に繋がることがある。
●無効とされた例
 解雇理由とされた事実は、労働者にいくらかの問題があったとはいえ、いずれも軽微なもので、注意をすればすむ程度のものだったが、使用者は長年それを放置していたのに、自主退職させるべく用務員への業務変更を命ずるなどした後に解雇した(いずみ福祉会事件・福岡高判平15.3.26)。
 旅客機内でシャンペンを誤って少量すすった軽微な過失をとらえて、任意退職を働きかけ、自宅待機命令を継続した後に解雇した(ノース・ウェスト航空事件・千葉地判平5.9.24)。
 時間外労働命令を拒否したのは、団体交渉の継続中の組合の争議行為であったのに、上記めいれいの拒否を勤務不良に当たるとして解雇した(安田運輸事件・東京地決昭61.2.28)。
 1日5軒の訪問の会社の指示に従わなかったが、解雇に相当する勤務成績不良とまでは言えない(ジャパン・エクスポート・プロモーション事件(東京地決昭61.7.16)。
 ●有効とされた例
 不動産会社の営業マンで、半年間契約実績が無く営業社員中最低の成績である者の会社や上司に対する誹謗、悪口、業務命令に従わないことを理由とする解雇(北斗建設事件・東京地判昭53.6.8)。
 入寮者から交代を要求され、給食に関する会社の指示に従わず業務放棄をした寮母の解雇(松下電器事件・名古屋地判昭50.3.19)。
 朝礼時などに上司、同僚に侮辱を繰り返し、作業指示に従わず、女性社員へ頻繁にセクハラをする者の解雇(斎藤コード事件・東京地判平4.5.25)。
 事例は非常に多いので、無効例、有効例を判例集で直接に調査してください。有効・無効の判断は、常識的に分かることです。ただ、裁判官の人間なので、これはヒドイと思われる例もあります。探し出すのも訓練ですよ。