2011-01-01から1年間の記事一覧

錚吾労働法

一四九回 労働者派遣問題⑥ 労働者派遣という新手の事業が登場して、雇用と請負の区別が曖昧になってしまった。派遣法2条3号の「労働者派遣を業として行う」事業者であるかどうかを厳密に判断するためには、どのような指標に着眼したらよいのだろうか。この…

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一四八回 労働者派遣問題⑤ 労働者派遣業界はいろいろと問題が多いってことが、これまでの説明で理解できたかな。さて、今回は、一般労働者派遣事業(一般派遣業)について見てみようか。、一般派遣業は、特定派遣業以外の労働者派遣事業のことです。派遣は使…

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一四七回 労働者派遣問題④ 前回で述べたことだが、常時雇用することによって労働者派遣業を解禁する道を開拓したんだった。労働者を物と同様にこっちからあっちへ周旋して稼ぐ輩とは違うからいいんだという理屈だったんだね。特定事業者が派遣する労働者は「…

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一四六回 労働者派遣問題③ 派遣会社が労働者を雇用すると言っても、ここには落とし穴がある。派遣会社に、派遣労働者を常時労働者として雇用し続ける意思があるのかどうか。また、雇用された派遣労働者に、派遣業者に雇用され続けたいという意思があるのかど…

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一四五回 労働者派遣問題② 昔の民法の教科書を読んでごらん。「労務供給契約」には「雇用、請負、委任」があって、これをハッキリと区別できないようでは法学部の学生じゃないぞてな語調で書いてあるだろ。偉大な民法の大学者の御存命の時代には、かくも隆々…

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一四四回 派遣労働者問題① 派遣労働者は増えることがあっても減ることがない、と言われてきました。派遣労働そのものは、派遣労働法ができるはるか以前から行われていました。もっとも、労働者派遣事業は、中間搾取・ピンハネの悪弊を伴い、組織的暴力団が主…

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一四四回 派遣労働者問題① 派遣労働者は増えることがあっても減ることがない、と言われてきました。派遣労働そのものは、派遣労働法ができるはるか以前から行われていました。もっとも、労働者派遣事業は、中間搾取・ピンハネの悪弊を伴い、組織的暴力団が主…

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一四三回 有期労働契約を規制すべきか⑤ 有期労働契約の入口規制は、連合など労働団体の皆さんの主張の熱心さのも関わらず、どうも具合が宜しくないように思うな。じゃあ、使用者団体がいう「有期労働契約の出口規制」はどうかな。厚労省が提示した案に「入口…

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一四二回 有期労働契約を規制すべきか④ 入口規制は、「有期労働契約の締結時に有期労働契約による」という理由が存在しなければならない。その「理由が存在しなければ、期間の定めを置くべきではない」。この考え方は、労働市場が拡大基調で労働者不足のとき…

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一四一回 有期労働契約を規制すべきか③ 有期労働契約を「入口規制」すべきであるという意見がある。「有期労働契約の入口規制」という言葉は、そこの君、新聞によく出てきたから知ってるでしょ。「何!知らんとな。ウーン、ムニャムニャ」。「有期労働契約の…

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一四〇回 有期労働契約を規制すべきか② 有期労働契約は、様々な必要に応ずるために使用者と労働者との間で締結されてきたものである。有期労働契約の規制といっても、有期労働契約を禁止するなどは不可能である。近時悪評の的となっている派遣契約の禁止だっ…

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一三九回 有期労働契約の規制は必要か① 有期労働契約は、期間の定めのある労働契約と言ってきたものです。 ① 有期労働契約は、特定の仕事が一定期間存在し、かつその期間の満了時にはその仕事が無くなるであろうという場合を想定し、その間その仕事のみを行…

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一三八回 ヨーロッパ共同体法による使用者破産時の賃金支払い 企業は、永遠のものではありません。アメリカ人のように、企業の平均寿命・平均余命なんてどうでもよいことに一喜一憂はしませんよ。だがじゃ、寿命が尽きる企業のまあ多いこと。つい最近も、「…

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一三七回 ヨーロッパ共同体法による解雇規制② 大量解雇の形式的な手続については、前回で述べた通りです。今回は、大量解雇が許容されるのは、いかなる条件を満たした場合なのかについて書いておきます。ここで言う条件は、大量解雇も有り得ることではあるが…

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一三六回 ヨーロッパ共同体法による解雇規制① 労働者の国際異動や国境を越える就職・就労が増加すると、自分にとっての適用法、現行法はどういうものかを常に意識しなければなりません。日本で日本人が働くときには、日本の労働法をそんなに意識していないと…

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一三五回 外国で解雇⑥ ドイツの解雇制限法に従って説明しましょう。解雇制限法1条1項は、「社会的に正当でない」解雇の無効を明言している有名な規定です。客室乗務員の解雇が、経営上止むを得ないとしてなされたとしよう。この場合、航空会社の経営状態が…

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一三四回 外国で解雇⑤ 外国籍の航空機や船舶は、日本の空港や港湾にあっても、その航空機内、船舶内は外国領内であるとされています。ドイツの航空会社に雇用されている日本人乗務員がいるとして、ドイツ国内発信の解雇通告を日本領空を飛行中の機内で受信し…

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一三三回 外国で解雇④ 労働契約の解除、人員整理の場合に、中国労働契約法には「経済補償金」と「賠償金」の制度があります。 「経済補償金」は、次の場合に雇用単位により労働者に付与されることになっている(同法46条)。 (1)中国労働契約法36条に…

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一三二回 外国で解雇③ 外国まで働きに行って現地で解雇されるようなことは、当人にとっては不本意なことと思います。引き続き準拠法が中国法で、裁判地も中国という前提で話を続けましょう。 A 試用期間中の労働契約解除の制限 勿論ですが、労働契約の解除ま…

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一三一回 外国で解雇② 為替相場などで日本だけでは苦しい日本企業が中国に行って生産するようになる。よく聞く話です。日本で期間の定めなき労働契約を会社との間で締結した労働者が、中国工場勤務となり、現地で解雇される場合を考えてください。これは国境…

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一三一回 外国で解雇② 為替相場などで日本だけでは苦しい日本企業が中国に行って生産するようになる。よく聞く話です。日本で期間の定めなき労働契約を会社との間で締結した労働者が、中国工場勤務となり、現地で解雇される場合を考えてください。これは国境…

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130回 外国で解雇① 「やってやるぞ」と勇んで外国へ行く労働者、「しゃあないから行くか」と渋々外国へ行く労働者。様々でしょう。本社から呼ばれて日本で解雇される労働者、現地で解雇される労働者。これも様々です。日本の解雇制限法は、判例によるもの…

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一二九回 企業の海外移転と解雇② 昭和46年当時、アメリカとメキシコの国境地帯を訪れたことがある。当時のアメリカは、ドル防衛(ドルと金との兌換の停止)とブレトンウッズ体制崩壊(「ニクソンショック」)並びにヴェトナム戦争で疲弊し、自信喪失してい…

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一二八回 企業の移転と解雇① 戦後最高の円高、高賃金カのデフレ、大震災、若者の理科系離れ、技術水準維持の危機等など、日本経済のファンダメンタルズは、決して宜しくない。こうした中で、情報開示の不徹底によって、政府およびエネルギー関連企業の信頼性…

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一二七回 解雇の手続②労基法20条 使用者が労働者を解雇するときには、少なくとも30日前に「解雇予告」(「予告解雇」)するか、さもなければ30日以上の平均賃金(「予告手当」)を支払って「即時解雇」することになる。この「解雇予告」と「予告手当」…

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一二六回 解雇手続①労基法19条の解雇制限 労基法19条の解雇制限は、所定期間中の解雇を禁止しているが、この解雇禁止には普通解雇と懲戒解雇の区別がない。労基法19条は、従って、懲戒解雇をも禁止していると解すべきである。治療期間または療養期間中…

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一二五回 解雇の承認 使用者が労働者に対する解雇の意思表示に労働者が不当解雇であるとか、違法な解雇であると異議を述べることがある。しかし、他方、労働者が予告手当を受領したり、退職金を受領したりしたら、解雇を承認したことになるのかという問題が…

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一二四回 懲戒事由ある場合の普通解雇 労働者の行為が就業規則所定の懲戒解雇の事由に該当する場合に、労働者本人の将来を考えて懲戒解雇とはせずに普通解雇にするとか、懲戒事由となった労働者の行為が会社の社会的信用失墜をも招く惧れがあるため敢えて普…

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一二三回 犯罪を理由とする解雇 「犯罪」の嫌疑をかけられ「起訴」された労働者は、ただ単に起訴されたというだけに留まり、有罪・無罪が確定したわけではない。しかし、労働者は、逮捕、拘留、起訴されることによって出勤することが出来なくなる。刑事事件…

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一二二回 リストラ解雇 会社をリストラをするから君たちはもう要らない。「リストラ」は、企業の再編成、企業の再構築という意味の英語の「リストラクチャリング」とかドイツ語の「ウムシュトルクツゥアイ―ルンク」と言われているものです。「リストラ解雇」…